House View Weekly

金利上昇も株価抑制には働かず

先週は各国の国債利回りが上昇したが、我々は利回りの動きが株価上昇に水を差したり終わらせたりするとは予想していない。

今週の要点

中国恒大集団をめぐるリスクは制御可能

アジアで最も多額のハイイールド債を発行する中国最大級の不動産開発会社、恒大集団が資金繰りにあえいでいる。高騰する不動産価格の抑制に向けて中国当局が不動産融資規制を強化したことがその背景だ。同社の債務再編の可能性をめぐる懸念から、世界の金融市場が動揺した。ただし、事態の進展によってはボラティリティ(市場の変動率)がさらに高まる可能性はあるものの、中国あるいは株式全般をアンダーウェイトとするような幅広いシステミックリスクにつながることは想定していない。中国の不動産や金融など、影響を被るセクターについては慎重な投資姿勢をとることを勧める。不動産セクターが政府から手厚い支援を受ける可能性は低く、金融銘柄は不動産セクターへの融資をめぐる懸念が重しとなっている。そのため、中国の不動産株式についてはエクスポージャーを限定することを推奨し、金融銘柄については投資推奨を中立としている。アジアのハイイールド債指数は恒大集団の構成比率を時価ベースで2%足らずに引き下げた。我々の基本シナリオは、他の中国不動産債券に重大な影響が波及するとは予想しておらず、アジアのハイイールド債の足元の利回りはリスクに見合うと考える。

要点:不動産市場や規制変更による逆風の影響が少なく、政策の追い風が期待できるセクターを推奨する。グリーンテック、サイバーセキュリティ、5Gなどのセクターは構造的成長も追い風となる。また、利回りの魅力が高いことから、グローバル・ポートフォリオにおいてアジアのハイイールド債を引き続き推奨する。

FRBのタカ派姿勢と債券利回りの上昇は株価上昇の妨げとはならず

先週21日から22日にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC) が開催された。会合では、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が11月にも債券購入の縮小を開始し、2022年半ばには終了する可能性を示唆するなど、予想以上に早い金融引締めの道のりが示された。予想外にタカ派の姿勢は他にも見られ、FOMCメンバーの金利予想を示すドットチャートが早期且つ速いペースでの金融引き締めを示唆したほか、コアPCEインフレ率が2022年と2023年に低下すると予想されているにもかかわらず、FOMCメンバーは2024年末までに6~7回の利上げを予想している。これは、インフレ目標を上回るインフレ水準に対する許容度が低下していることを示す。FOMCがタカ派寄りのトーンとなったことに加え、その後米国10年国債利回りが17ベーシスポイント(bp)上昇して1.49%で週を終えたが、我々は金融緩和の縮小によって株価の上昇が終わるとは考えていない。FRBの金融緩和政策の緩やかな巻き戻しは、インフレ懸念を要因としたものではなく、経済成長に対する楽観的な見方を反映したものだ。経済成長のペースは、ピークは打ったとしても、今後も高い水準で推移するだろう。インフレ率がFRBの予想通り現在の上昇ペースから減速すれば、FRBは統計重視の姿勢を維持しやすくなり、金融引き締めを緩やかに行うことで低成長局面に対応するだろう。

要点:株価には引き続き上昇余地があるとみており、エネルギーや金融など世界の経済成長の恩恵を受けるセクターがアウトパフォームすると予想する。一方、FRBは全体的には金融緩和を維持し、国債利回りの上昇圧力を抑えるだろう。利回り追求に向けて多様なアプローチを探ることを投資家には勧める。

市場のリスクに応じてオルタナティブ投資で分散投資

市場は先週、大きく変動した。中国の不動産市場の信用リスク、FRBによるテーパリング、新型コロナのデルタ株による感染拡大、世界のサプライチェーンの混乱をめぐる懸念などがその背景だ。株価は引き続き上昇余地があるものの、様々なリスクがあることから、年末にかけてはリスクとリターンの源泉を分散させることを検討してもよいだろう。ヘッジファンドやプライベートエクイティなどのオルタナティブ投資は、ポートフォリオのリターンを促進し、分散を高める効果が期待できる。ヘッジファンド指数のHFR指数によると、ヘッジファンドは2020年に2桁台のリターンを記録しており、今年も年初来で平均5~10%上昇している。プライベート市場も好調に推移しており、2,000以上のファンドで構成するグローバル・ケンブリッジ・アソシエイツ・プライベート・エクイティ指数は1‐3月期に7.7%上昇し、MSCIワールド指数の5%を上回った。そのほか、世界のヘルスケア・セクターは、製薬会社などにみられるディフェンシブ性とや、メドテックや遺伝子療法などにみられる長期成長性など、様々な特性を併せ持っている。

要点:直近では下落したものの、株式市場はいまだ史上最高値に近い水準で推移しているため、投資家には多様なリターン源泉を検討することを勧める。

深読み

金利上昇も株価抑制には働かず

投資家がこれまでの予想よりも速いペースでの金融引き締めを織り込み始めたことから、先週は各国の国債利回りが上昇した。23日には米国10年国債の利回りが13ベーシスポイント(bp)上昇し、1日の上げ幅としては2月以降で最大を記録した。ドイツ国債と英国国債の利回りも上昇し、8月後半からの上昇幅はドイツ国債が25bp、英国国債が40bpとなっている。この動きは、ノルウェー中央銀行の利上げに加え、イングランド銀行でも早期利上げがありうるとの観測、さらには米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢を強めていることを反映したものである。

しかし、利回りが上昇しても株価は堅調で、むしろS&P500種株価指数は1週間で0.5%上昇している。我々は利回りの動きが株価上昇に水を差したり終わらせたりするとは予想していない。

FRBがテーパリングのスケジュールを発表したが、債券利回りの大幅な上昇には至らなかった。 FRBはここ数カ月にわたり、2013年のテーパータントラムの二の舞を避けるため、周到に地ならしを進めてきた。当時、FRBによる突然のテーパリング(量的緩和縮小)の発表で債券利回りが急上昇し、株式は下落した。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBメンバーは、経済統計が基準を満たしている限り、年内にテーパリングを開始し2022年半ばごろに終えるのが適当であろうとの見方を示した。

中央銀行の段階的な政策シフトは、インフレ懸念よりも経済成長に対する楽観的な見方を反映している。 経済成長のペースがピークを打ったとしても、高止まりが続くとみられる。9月のFOMCで、FRBはGDP成長率見通しを今年が5.9%、来年を3.8%としており、景気回復が順調に進んでいることを示唆している。コアインフレ率については今年の3.7%から来年は2.3%に低下すると予想しており、FRBが導入した2%の「平均インフレ目標政策」を踏まえると、若干の2%超えは容認されそうだ。先週発表された購買担当者景気指数(PMI)も、経済活動が緩やかに減速しているとはいえ依然堅調であることを示した。米国の総合PMIは54.5と、4カ月連続で低下したとはいえ、依然景気判断の分かれ目となる50を上回っている。ユーロ圏と英国の同指数も50台半ばだった。

投資家は株式の見通しについて慎重になっているが、これは歴史的に見ると逆張りのサインである。 全米個人投資家協会(AAII)が毎週実施している調査によると、今後6カ月で株式が上昇すると予想した回答者は全体の22%に留まり、ここ1年あまりで最も慎重な結果となった。この数字は、調査が開始された1987年以降に発表された数字全体の95%を下回っている。しかし、この数字は逆の指標としての確度も高く、強気の回答者が25%未満の場合、翌年は株式が好調に推移する傾向がある。現在のように事業環境が好調な時は、この傾向はさらに強まる。ISM製造業景況感指数が長期平均の53を上回っている(先月は60)局面で投資家が慎重姿勢の場合、S&P500種株価指数は翌年に平均で22%上昇する。しかも「ヒット率」も高い。こうした条件が揃うと、株式は常に翌年にかけて上昇してきた。最低リターンは4%だった。

金利の緩やかな上昇は株式市場全体に水を差すのではなく、セクターの相対パフォーマンスに影響する可能性が高い。 1997年までさかのぼるデータによると、米国10年国債利回りの上昇が3カ月間で100bp未満の場合は株価は上昇し、それよりも速く、かつ大きく利回りが上昇した場合に限り株価は下落した。10年国債の利回りが2021年末までに1.8%、その後2%に上昇しても、他の条件がすべて同じであれば、債券と比べた株式の相対的な魅力を示す株式のリスクプレミアムは、株式の方が依然魅力があることを示すとみられる。利回りの上昇は全体的な株価上昇を抑制するよりも、テクノロジーなどのグロース・セクターと比べて、金融やエネルギーなどの景気に敏感なシクリカル・セクターに有利に働くと予想する。将来のキャッシュフローの現在価値に対し、グロース・セクターは金利の上昇からの足かせが大きいからである。

よって、我々はグローバル景気回復からの勝ち組銘柄を推奨する。金融引き締めのペースは各国で異なるものの、主要中央銀行は当面金融緩和を継続し、需給ギャップが縮小し雇用環境が改善しない限り引き締めには転じないと予想される。これを踏まえ、エネルギー、金融、日本株を含め、景気敏感セクターが市場をアウトパフォームするとみている。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2021年9月27日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年9月29日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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