House View Weekly

新型コロナの感染拡大は抑制傾向が続く

新型コロナの感染拡大を受け、一部の国では行動制限が強化されているが、感染拡大の抑制と経済正常化に向けた動きは各地で進んでいる。

今週の要点

新型コロナの感染拡大は抑制傾向が続く

新型コロナの感染拡大を受け、シンガポールでは行動制限が強化され、オーストラリアでは人口2,500万人のうち半数超が引き続き外出制限下にあるほか、日本では東京など19都道府県で緊急事態宣言が9月末まで延長された。こうした状況は市場のボラティリティ(価格の変動幅)を高める要因となりかねず、一部の国では景気回復も鈍化しうるが、感染拡大の抑制と経済正常化に向けた動きは各地で進んでいる。ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、世界の新型コロナウイルスの新規感染者数は9月5日の週に6月初旬以降で初めて減少し、4月につけたピークを大きく下回っている。加えて、ワクチン接種は世界中で進展しており、1日あたりの接種回数は5月から50%超増加した。また、EUでは成人人口の70%が2回のワクチン接種を完了しており、米国では人口の55%近くが2回の接種を完了している。米国の最近の調査によると、2回の接種を完了している場合、ブレイクスルー感染(ワクチン接種後の感染)や重症化、死亡にいたるケースは稀であることが明らかとなっている。そのため、全国的なロックダウンが再施行される可能性は低いとみている。

要点:新型コロナの感染状況が世界的に改善傾向にあることから、投資家には経済再開と景気回復を捉えるポジショニングを勧める。景気拡大の裾野が広がっていくに伴い、シクリカル(景気敏感)セクター、特にエネルギーと金融がその恩恵を受けることが見込まれる。また、世界経済の回復の恩恵を特に受けやすい日本株式を推奨する。

中央銀行は金融緩和を徐々に巻き戻し

欧州中央銀行(ECB)は先週9日にパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の購入ペースを「緩やかに減速させる」ことを発表した。超緩和的な金融政策スタンスから正常化へと舵を切るG10諸国中銀の動きに追随した形だ。だがそうした中銀は同時に、金融緩和の巻き戻しが段階的に実施される旨を強調しており、またテーパリング(量的緩和の縮小)と利上げは別物であるとしている。例えば米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、8月末に開催された経済シンポジウム(通称「ジャクソンホール会議」)で、労働市場の回復が持続すれば年内にテーパリングを開始する可能性があるとしながらも、利上げに向けた試金石は「かなり厳しいものになる」と述べている。オーストラリア準備銀行も先週、債券購入の規模を縮小したが、同時に期間を延長することを決定したことで、市場からは「ハト派的」なテーパリングと捉えられた。金融政策は2年近くにわたり世界で軒並み緩和の一途をたどっていたが、今や転換点を迎えており、各国中央銀行がハト派とタカ派に分かれ始めたことで、一部の通貨に投資機会が生じることが見込まれる。

要点:金融緩和政策の慎重な巻き戻しは、今後も引き続き世界経済の回復と株式市場の追い風になると我々はみている。通貨においては、英ポンド、ニュージーランド・ドル、ノルウェー・クローネをオーバーウェイト、ユーロ、スイス・フランをアンダーウェイトとすることで、向こう6~12カ月間で1桁台半ばから後半のトータルリターンが期待できると考える。

サプライチェーンの混乱が景気回復を阻害する可能性は低い

コロナ禍でサプライチェーンの混乱が生じており、自動車メーカーや医療機器プロバイダーからアパレル小売、家具販売、食品販売に至る様々な企業が受注に対応できず、重大な懸念事項として指摘されている。サプライチェーンの混乱の影響とそれに対する認識は、米国の小売業などのように、需要が供給を上回り、しかも在庫がすでに低位にある場合には深刻化する。しかし、今後は需要は世界的に減速していくだろう。過剰貯蓄の取り崩しによる一時的な需要拡大が繰り返されるとは考えにくく、また、将来の消費が一部前倒しされた可能性も高いためだ。セクターレベルでは、混乱が当面持続する分野もあるだろう。例えば米国では半導体不足が深刻化している。半導体不足のピークは今年7-9月期(第3四半期)と予想されるものの、完全に正常化するのは来年後半となる可能性もあると我々はみている。目先の企業利益については、コスト圧力の上昇分は売上増で十二分に相殺される見通しだ。S&P500種株価指数構成企業の売上高利益率は、4-6月期(第2四半期)に数十年ぶりの最高となる14%弱に達している。

要点:引き続き、世界的な経済回復が今後も順調に進展すると予想しており、世界的な経済再開を捉えるポジションを推奨する。株式市場では、シクリカルセクターとバリューセクター、日本、経済再開からの恩恵が期待される米国、アジア、欧州の選別的銘柄を推奨する。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2021年9月13日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年9月15日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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