ドル円

日本の選挙はドル円に影響するか?

誰が次期首相に就任したとしても、新型コロナ禍において財政・金融政策は大きく変わることはないと予想する。円は引き続き魅力的な調達通貨となるだろう。

  • 今後数カ月以内に実施される2つの選挙が、菅首相の続投可否を決定づける。
  • 誰が次期首相に就任したとしても、新型コロナ禍において日本の財政・金融政策は大きく変わることはないと予想する。
  • 我々の米ドル高・円安予想に対するリスクとしては、世界経済成長とリスク・センチメントの急激な悪化や、日銀のタカ派姿勢への急転換などが挙げられる。

菅内閣の支持率低下、焦点は選挙へ

日本では数カ月以内に2つの重要な選挙が控えている。菅首相の自民党総裁任期満了(9月30日)に伴う総裁選と、衆院議員任期満了(10月21日)伴う衆院選である。政治観測筋の一部では、菅氏が9月5日の東京パラリンピック閉幕後直ちに衆議院を解散し、10月10日か17日に総選挙を実施する可能性が指摘されている。そうすることで菅氏は自民党総裁選を回避することができ、自民党が衆議院選で勝利すれば首相の座を維持できる見通しだ。野党が分断しており、それぞれの支持率も低いため、自民党勝利の可能性は高いと思われる。だが、新型コロナ新規感染者の急増で政府は緊急事態宣言を9月12日まで延長する可能性があることから(訳注:8月20日に延長を決定)、菅首相が9月上旬に衆議院を解散できるかどうかはまだ不透明である。新型コロナの感染状況が改善しない場合、10月21日の任期満了ぎりぎりでの解散もあり得る。そうなると投開票の日程は最も遅くて11月28日となる。一方、菅内閣の支持率は先日、節目の30%を初めて下回ったため、ワクチン接種の加速化と追加経済対策で支持率回復を狙いたい考えだ。現時点では、自民党内に菅総裁に対する強力な反対勢力がなく、次回の衆議院選で自民党が過半数を維持する可能性も高いことから、菅首相続投の公算は大きいとみられる。

首相が交代した場合の円への影響

予想に反して菅氏が首相の座を守れなかった場合、円にはどのような影響が及ぶだろうか。菅総裁に対する有力な対抗馬はまだ浮上していないが、我々は、日銀の現行の超緩和政策に対して懐疑的な見方が示されないか注視している。とはいえ、黒田日銀総裁の任期は2023年4月までであり、任期満了まで務める限りは日銀の政策スタンスが直ちに大きく転換されることはないと予想する。これは、2020年8月に安倍晋三前首相が健康上の理由で突然辞任した際に、円の反応が薄かった説明にも通ずるかもしれない。さらに現在の新型コロナの感染状況をめぐる不確実性から、誰が次期首相になったとしても、足元のリフレ的な財政および金融政策が大きく変更されることはないと見ている。こうしたことから、円は引き続き調達通貨として魅力的であると考えており、日米の金融政策の乖離を背景に、ドル円相場は円安が進み2022年9月末には116円に向かう可能性が高いとの見方を維持する。


本稿はUBS AG Singapore Branch およびUBS AG Hong Kong Branch が作成した“USDJPY: Do near-term elections pose downside risk?”(2021年8月19日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年8月23日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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