中国株式

くすぶる規制リスク

不動産、ヘルスケア、インターネットの各セクターには規制リスクがあると見ており、先行き不透明感から、短期的にはこの3セクターへの圧力は高まる可能性がある。

  • 中国での教育関連の規制は想定以上に厳格。 中国政府による教育産業への規制強化は何カ月も前から予想されていたが、24日に公表された規制策は想定以上に厳格で、投資家の失望売りを招いた。新規制は既存の学習塾をすべて非営利団体に転換し、当該企業の株式を実質的に廃止する。さらに、教育セクターへの外国からの投資を認めず、学習塾の広告宣伝を禁じる。今回の方針変更で、教育産業全体に構造的な変化が起きるだろう。
  • 規制リスクの高いセクターは不動産、ヘルスケア、それともインターネット? 我々の基本シナリオでは、不動産、ヘルスケア、インターネットの各セクターには規制リスクがあるとの見方を変えていないが、規制の形態は教育産業とは異なるだろう。先行き不透明感から、短期的にはこの3セクターへの圧力は高まる可能性がある。中国株式への投資戦略としては、不動産の非推奨は継続し、ヘルスケアの推奨を取りやめる。政府からの明確な方針が示されるまでは、インターネット・セクターには下げ圧力が続くと予想する。
  • フェアバリュー(適正価格)に基づくリターンは1桁台後半にとどまる見通し。 中国株式は規制をめぐる不透明感が重石となり下落した。中国株式の中期的な利益とバリュエーションの見通しについては引き続き強気を維持するが、フェアバリュー(適正価格)に基づく2021年年末までの上昇余地は1桁台後半にとどまると予想する。また、オフショア(中国本土外上場)株式よりもオンショア(中国本土上場)株式の方が高リターンが期待できるとみている。差し当たって政策リスクの影響を受けにくいグリーンテック、耐久消費財および消費サービス、エネルギーの各セクターを推奨する。

オフショア中国株式には投資機会がまだあるか?

規制という逆風が、インターネットとフィンテックから教育セクターにまで広がり、中国のオフショア株式は2 月の高値から27%下落、今週だけで10%以上急落した。中国政府の規制強化は中長期的な発展に向けた市場環境の整備が目的であるが、政府の資本市場戦略に対する懸念が高まり、結果的に中国株式市場に対する投資家の信頼が揺らぐ事態となった。オフショア株式市場(MSCI 中国指数)のバリュエーションは、予想株価収益率(PER)ベースで13.8 倍と、グローバル市場(MSCI オールカントリー・ワールド指数)の20.2 倍に比べて30%超の割安となっている。

投資家はオフショア株式のリスクプレミアムの上昇を織り込んでいる。リスクプレミアムはしばらく高止まりすると予想されているが、我々は、ここから年内のリターンについては、主に企業業績の伸び(主に景気敏感セクターやバリュー株)がけん引すると考える。株価はこの1カ月で大きく調整したことから、投資家には、利益の伸びが見込まれ、かつ規制リスクにさらされにくい銘柄を選別することを勧める。MSCI中国指数構成企業については、2021年は16%の増益を予想しており、この堅調な業績見通しが引き続きバリュエーション拡大の主因になるとみている。中国をけん引する巨大ハイテク銘柄の2021年度利益については、横ばい~1桁台の成長を予想する。経営陣が増益分のすべてまたは一部を新規投資に回す方針を示しているからだ。しかし、2022年以降は増益率は従来の水準に戻るとみている。ただし、教育以外の高リスクセクターにも規制強化の影響が及んだ場合は、我々の増益率予想は下押し圧力にさらされるかもしれない。

我々の推奨セクターとしては、耐久消費財および消費サービス、エネルギー、グリーンテックなどが挙げられる。より広い視点では、リフレーションとグローバル経済の再開による恩恵が期待できる景気敏感セクターとバリュー株を引き続き推奨する。我々が予想する1桁台後半のリターンは、主に2021年末までの我々の増益予想とバリュエーションの低下を反映している。規制リスクにより株式のリスクプレミアムは今しばらく高い状況が続く見通しであるため、年末まではバリュエーションの上昇は見込みにくい。

オンショアA株の見通しはどうか?

中国のA株指数であるCSI 300指数は、7月26日から7%下落した結果、実績ベースでのPERは(14.4倍から)13.4倍に低下し、足元、過去平均から0.5標準偏差高い水準で推移している。今回のバリュエーションの低下は、政策リスクへの懸念の高まりがきっかけであると考えられるが、この規制リスクが最終的に大幅な業績悪化を招くとは予想していない。確かに、強まる規制強化への警戒感から、バリュエーションが早期に反転上昇する可能性は低いと考えられるが、4-6月期(第2四半期)の業績発表も事前予想を上回る好決算が見込まれるなど、CSI300指数構成企業の堅調な増益予想は今後も株価のけん引役となるだろう。その結果、市場への信頼感も一定程度回復すると思われる。CSI300指数はここから年末にかけて10%台前半のリターンを上げると予想する。

学習塾業界の非営利団体化は、他のセクターにも波及するか?

急成長した学習塾業界の非営利団体化(株式を実質的に廃止する)を柱とする教育産業への規制策により、中国株式市場は大幅調整した。この発表を契機に、投資家は、ニューエコノミーをはじめとする他セクターにも同様の規制措置が及ぶのではないかとの警戒感を強めた。塾関連会社からの広告料収入の損失はオンライン広告セクターに若干影響を及ぼしうるが、この分野を除けば、他セクターのファンダメンタルズへの波及的影響は限定的であると我々はみている。公共財としての役割を担う不動産やヘルスケアといった分野には引き続き規制リスクが存在するだろうが、教育セクターのように非営利化を求めるような規制とはならないだろう。

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本稿は、UBS AG Hong Kong Branchが作成した“Chinese equities: Regulatory risk lingers”(2021年7月28日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年8月4日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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