ドル円

米ドル高円安が進む見通し

ドル円相場の見通しを従来よりも米ドル高方向に修正し、2021年9月末で112円、2022年6月末で115円に達すると予想する。米国金利の上昇や世界経済の成長加速に加え、来年には米ドルの回復も見込まれることから、今後は米ドル高(円安)方向に向かうものと予想する。

  • ドル円相場の見通しを従来よりも米ドル高方向に修正し、2021年9月末で112円、2022年6月末で115円に達すると予想する。
  • 米国金利の上昇や世界経済の成長加速に加え、来年には米ドルの回復も見込まれることから、今後は米ドル高(円安)方向に向かうものと予想する。
  • 我々の米ドル高・円安予想に対する主なリスクとしては、世界成長とリスク・センチメントの大幅な悪化、日銀のタカ派スタンスへの急転換などが挙げられる。

一段の米ドル高・円安に動く要因

我々は今年年初から米ドル高・円安の見方を維持してきたが、今後はさらに円安が進むと見ている。ドル円は、2021 年 9 月末が 112 円、同 12 月末が 113 円、2022 年 3 月末が 114 円、同 6 月末が 115 円と予想する(従前予想は 2021 年 6 月末が 110 円、それ以降 2022 年 3 月末までが112 円)。

米連邦準備理事会(FRB)で量的緩和の縮小(テーパリング)を巡る議論が進むにともない、相場は今後数カ月で米ドル高・円安方向に向かうものと予想する。直近の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録では、一部の参加者が将来的なテーパリング協議開始の可能性に言及したが、4 月の非農業部門雇用者数が予想を下回ったことから、議論が開始されるには雇用統計があと数カ月は堅調に推移する必要があるとの指摘もある。今後数カ月の景気指標で FRB が経済の一段の進展を確信できるようになれば、12 月の FOMC 会合での正式なテーパリング発表に向けて徐々に下準備を進めるものと予想する。これに伴い米国の長期金利も足元の約1.6%から 2022 年 6 月には 2.15%程度まで上昇すると考える。日銀が10 年国債利回りをゼロ%近辺で維持する中、日米金利差の拡大は米ドル高・円安の大きな要因となるだろう。 

FRB のハト派スタンスの弱まりが米国の金利と米ドルを下支えすることに加えて、世界成長も今後 12 カ月は底堅く推移するものと予想する。世界経済成長が加速すれば、日本の企業や資産運用会社はグローバルに収益機会を追求して海外投資を増やす傾向にあるため、通常は円安に動く。日銀による 2%物価目標の達成は当面は困難な見通しであるため、日銀が予想外にタカ派寄りにシフトする可能性は限定的だと思われる。 

投資見解

  • 世界経済の回復と、安全資産としての円の需要後退を受け、今後12カ月では円はG10諸国通貨に対して弱まると予想する。
  • 1ドル=105円に向かえば日本の運用会社がヘッジ無しでの外債投資の積み増しに動くとみられ、この水準が下値支持線として強く意識されるだろう。一方、115円に向けて上昇する場面では、日本の輸出業者が為替ヘッジを活発化させるだろう。
  • 日銀が現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を予想外に変更する場合には、投資家の間に動揺が広がり、ドル円が 105 円を割り込むなど円がドルに対して上昇する可能性がある。一方、FRB が想定以上にタカ派姿勢を強めた場合は、米国金利が急騰しドル円が 115円を超える可能性もある。
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本稿はUBS AG Singapore Branch およびUBS Switzerland AGが作成した“USDJPY: Tailwinds for a higher USDJPY”(2021年5月21日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年5月24日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます

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