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新変異株への懸念後退で株価反発

株式市場は7日(火)、オミクロン株をめぐる前向きな情報を受けて、株価が上昇し、ボラティリティ(価格変動率)は低下した。

何が起きたか?

株式市場は7日(火)、株価が上昇し、ボラティリティ(価格変動率)は低下した。新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の病毒性が低い可能性が示唆されたことや、ワクチン・治療薬に関する前向きな情報が報じられたことに加え、米国の経済指標も良好な内容となったことが支援材料となった。さらに、中国人民銀行(中央銀行)が6日、大半の銀行の預金準備率を引き下げると発表したことも、中央銀行が景気回復を支える姿勢を維持するとの見方を裏付けた。その後発表された中国の貿易統計も、引き続き堅調な輸出と輸入の回復を示した。

S&P500種株価指数の終値は2.1%高となった。上昇は市場全体で見られ、ナスダック総合指数は3.0%高で取引を終えた。オミクロン株による石油需要への影響懸念が後退し、ブレント原油価格が2.4%上昇したことから、エネルギー株も2.3%高と大幅に上昇した。欧州では、ストックス欧州600指数が2.5%上昇した。S&P500指数先物のオプション取引のインプライド・ボラティリティ(予想変動率)を示すVIX指数は5ポイント下落し、終値は22となった。欧米に先行するアジア市場では、日経平均株価が1.9%高、香港ハンセン株価指数が2.7%高でそれぞれ取引を終えた。

米国債の長短金利差は縮小し、米2年国債利回りが5ベーシスポイント(bp)上昇する一方、米10年国債利回りの上昇幅は4bpにとどまった。

さらなる情報が待たれるが、オミクロン株流行の中心地である南アフリカの初期データからは、オミクロン株の症状がデルタ株よりも軽いことが示唆されている。バイデン米政権のファウチ首席医療顧問は7日、オミクロン株の重症度について「デルタ株よりも重篤でないことはほぼ確実」と述べた。

英製薬大手は7日、米バイオテクノロジー企業と共同開発した新型コロナ抗体治療薬が、オミクロン株で特定されているすべてのスパイクタンパク質の変異に有効という結果が得られたと発表した。

一方、欧州医薬品庁(EMA)と欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、エビデンスから、ウイルスベクターワクチンとmRNAワクチンを併用しても、新型コロナウイルスに対する良好な水準での抗体が形成されることが示唆されたとし、種類の異なるワクチンの混合接種を認める勧告を出した。

さらに、南アフリカのアフリカ健康研究所は、ワクチン有効性分析試験の結果を発表し、オミクロン株には、実験で使用した既存ワクチンを部分的に回避することが可能であるが、その能力は完全ではなく、ブースター接種は防御効果を高めるとの結論を出した。

この状況をどう解釈するか?

我々はオミクロン株をめぐって複数のシナリオを作成している。基本シナリオでは、オミクロン株の症状は非常に軽く、新型コロナウイルスがパンデミックから、一定の地域に日常的に繰り返し発生するエンデミックに移行したことが示唆されると想定している。一方、最悪のシナリオでは、新変異株の出現により各地でロックダウンが再導入されると予想する。

7日の展開は、我々の基本シナリオおよび強気シナリオと整合する。これらのシナリオでは、オミクロン株の感染力は弱く、市場の焦点は新型コロナから経済指標に移るとみている。

  • 米国経済の足元の指標は堅調。7日に発表された米国の10月の貿易統計からは赤字幅の縮小が示され、世界最大の経済大国である米国のGDP成長率見通しを下支えした。アトランタ地区連銀が試算するGDP成長率「GDPNow」は、ここ数週間にわたり上昇傾向をたどっており、米国の10-12月期GDP成長率は約9.7%との見通しが示されている。
  • 市場はFRBのテーパリング(量的緩和の縮小)のペース加速をすでに織り込んでいるため、株価へのマイナスの影響は少ない。投資家は、FRBが2022年中に25bpずつ3回の利上げを実施するとの見通しをすでに織り込んでいる。テーパリングが加速される可能性も高いが、それでもなお来年1-3月期は量的緩和が維持される見込みだ。主要中央銀行のバランスシートの合計は、2022年中は依然として拡大する見通しである。さらに、上述のとおり、中国人民銀行は6日、大半の銀行の預金準備率を50bp引き下げることを決定し、金融政策の緩和を示唆した。政府当局の不動産業界に対する論調も、規制緩和を示唆する方向へ変化した。
  • 投資家のポジショニングも追い風に変わりつつある。ここ数週間、大半のシステマティック戦略に加え、ヘッジファンドもリスク資産をかなり減らしてきたため、市場のモメンタム(勢い)回復を受けて、両者ともリスク資産の買戻しに動く可能性が高い。アメリカ個人投資家協会(American Association of Individual Investors: AAII)が実施した最新の週間調査では、今後6カ月で株価の上昇を予想する回答者は27%にとどまり、これまでの全調査結果の87%を下回る結果となった。この個人投資家のセンチメントはコントラリアン(逆張り)の指標(弱気の人が多いとマーケットは上がる傾向にあるとされている)とみなされてきた。特に、ISM製造業景気指数でみた企業景況感が堅調なときは、相場の見通しを考える指標として機能する。いまはまさに景況感が高い局面である。

投資見解

この2日間で株式市場が急反発したことからもわかるとおり、市場の不安感が高まった局面で性急な売りに出るとリターンを損ねかねない。

我々の基本シナリオでは、株式市場は上昇基調を取り戻し、日本、ユーロ圏、エネルギー、金融など、足元で下落した市場やセクターの一部が今後アウトパフォームする可能性が高いとみている。

また、市場のこうした動きから、国・地域および資産クラスに広く分散したポートフォリオを構築することが重要であることが改めて確認される。投資家には、景気敏感株に加えヘルスケアなどディフェンシブなセクターを組み入れることでポートフォリオのバランスを図り、さらにヘッジファンドなどのオルタナティブ資産(代替資産)への分散投資も検討することを勧める。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Stocks rebound as omicron fears subside”(2021年12月7日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年12月8日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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