House View Weekly

中国は無視することのできない大国

年1回開催される中国の全国人民代表大会(「全人代」)が5日に開幕し、李克強首相は新型コロナウイルスの感染拡大と世界的な景気後退に見舞われた「異例の」年からの中国経済の回復を強調した。中国は、主要国の中で唯一、2020年にプラス成長を確保した。だが、中国の中長期の発展はさらに目を見張るものがある。しかし、中国がこれだけ急成長を遂げているにもかかわらず、グローバルな指数に占める中国の構成比率に比して、グローバル投資家の中国市場への資産配分は非常に少ない。

今週の要点

各国中銀が利回りの抑制に動く中、景気敏感銘柄へのローテーションが続く

米国債利回りの最近の急上昇に伴い、株式市場では再びボラティリティ(相場の変動)が高まり、グロース(成長)銘柄から景気敏感銘柄へのローテーションが生じた。最も打撃を受けたのはテクノロジー銘柄で、5日の米市場ではS&P500種株価指数が1.3%の下落だったのに対し、ハイテク銘柄中心のナスダック総合指数は2.1%の下落となった。1月末以降、米10年債利回りは50ベーシスポイント(bp)上昇して1.57%に達し、先週は一時、過去1年間で最高となる1.62%を記録した。過去3カ月の間に、市場は初回利上げ時期の見通しを1年前倒しし、2022年後半と織り込んでいる。しかし、各国中央銀行が正当化できない利回り上昇の抑え込みに動く中、利回り上昇は落ち着き、米10年債利回りは1.5%近辺で2021年末を迎えると我々は予想している。フランス銀行(中央銀行)のビルロワドガロー総裁は今週初め、金融引き締めは「正当化できない」と述べ、欧州中央銀行のルイス・デギンドス副総裁は、債券利回りの望ましくない上昇を抑えるために何らかの措置をとる可能性があると発言した。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長も4日、FRBは政策運営には「忍耐強く」あたり、利上げが適切になるには「道のりはまだ長い」と述べた。今後数カ月のインフレ上昇は一時的なものにとどまる可能性が高いと発言し、ハト派の姿勢を保った。

要点:各国中央銀行は、高官の発言や、債券購入の実施により、利回り安定化の努力を続けると我々は予想している。よって、実質利回りの急上昇により株式の上昇相場が腰折れすることはないと考える。経済成長が加速するにつれ、時折ボラティリティが高まりながらも、景気敏感セクターがアウトパフォームすると予想している。

中国の投資機会を探る

5日に開幕した中国共産党の全国人民代表大会(国会に相当)で、5カ年計画が策定されている。この機会に、中国の足跡を振り返ってみたい。中国経済は過去20年間で5倍の規模に成長し、今や世界の経済生産の約20%、年間GDP成長率の30%を占めている。また、中国の株式市場の時価総額は25倍に増大し、世界全体の11%近くに達している。しかし、中国のこうした成長もかかわらず、グローバルな指数に占める中国の構成比率に比して、グローバル投資家による中国市場への資産配分は非常に少ない。我々は、中国は大きすぎて且つ極めて独自性が高いため、無視できない存在であると考えている。中国の研究開発費は米国の2倍のペースで増加しており、テクノロジー、イノベーション、サステナビリティのリーダーになりつつある。金融市場は成熟し、債券、クレジットの両市場で投資機会へのアクセスが改善されつつある。さらに、中国の国内志向型経済と金融政策の他国からの独立性により、金利サイクルは他の主要国市場と乖離することが多いことから、投資においては分散効果をもたらす。例えば、2018年はFRBが金融引き締めを行った一方で中国人民銀行は利下げを実施したため、米国債は下落したが、中国の債券は上昇した。MSCIチャイナAオンショア指数は、MSCI新興国指数との相関が0.84なのに対し、MSCIオール・カントリー・ワールド指数(ACWI)との過去の相関は0.5だ。

要点:世界における中国の台頭は続き、株式、債券、通貨にいたる幅広い市場に投資機会が見出せると考えている。

半導体をめぐる覇権争いがテクノロジー銘柄の中長期見通しの追い風に

先週は半導体産業をめぐる米中の覇権争いが激しさを増した。中国は2021年から2025年までを対象とする5カ年計画に国内半導体産業への資金支援強化を盛り込み、一方のバイデン米大統領は国内の半導体生産を加速させるため370億米ドルの政府支援を要求した。地政学的対立は投資の足かせとなることが多いが、足元のこうした状況は投資機会をもたらすと我々は考えている。国内企業大手への支援強化は、グローバルプラットフォーム企業や、中国のデジタル経済企業に選別的に恩恵をもたらすだろう。世界の半導体不足は、サプライチェーンの脆弱さと1社または少数のサプライヤーに依存するリスクを浮き彫りにした。この結果、国内の半導体受託製造(ファウンドリー)向け投資が加速するだけでなく、次世代インフラやイネーブリング技術の国内管理体制の強化も促すと考えている。深刻な車載半導体不足の経験から、世界の自動車メーカーは電気自動車用電池や部品の国内生産の拡大を要求している。米中政府の支援により、両国のフィンテック、オートメーション、ビッグデータ、クラウドプロバイダなど他のイネーブリング技術企業にも恩恵が及ぶだろう。

要点:米中間の半導体摩擦は、投資を増加させる要因でもあり、また地政学的対立がいかにして他の最先端テクノロジーにも影響を及ぼすかを示唆している。イネーブリング技術には長期の投資機会が見出せると考える。

中国は無視することのできない大国

年1回開催される中国の全国人民代表大会(「全人代」)が5日に開幕し、李克強首相は新型コロナウイルスの感染拡大と世界的な景気後退に見舞われた「異例の」年からの中国経済の回復を強調した。中国は、主要国の中で唯一、2020年にプラス成長を確保した。

だが、中国の中長期の発展はさらに目を見張るものがある。中国経済は過去20年間で5倍の規模に成長し、今や世界の経済生産の約20%、年間GDP成長率の30%を占めている。また、中国の株式市場の時価総額は25倍に増大し、世界全体の11%近くに達している。

しかし、中国がこれだけ急成長を遂げているにもかかわらず、グローバルな指数に占める中国の構成比率に比して、グローバル投資家の中国市場への資産配分は非常に少ない。我々の最新の「中国投資」レポートでは、中国の金融市場について掘り下げ、投資家にとっての機会を明らかにしている。

1. 中国は無視することのできない大国。 中国は今年の経済成長率目標を「6%以上」としているが、我々は8%以上に達する可能性が高いと考えている。中国はテクノロジーとイノベーションの分野でも世界を主導する存在になりつつある。研究開発費は米国の2倍のペースで増加しており、スーパーコンピュータや産業用ロボットの台数も世界最多である。中国は先進のスマートインフラと電気自動車向けバッテリーセルの技術革新で、2060年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を達成する目標を掲げている。中国は小売や金融業界のデジタル変革もけん引し、世界のeコマース市場の57%を占めている。

2. 金融市場が成熟し、投資機会へのアクセスが容易になりつつある。 中国は2018年に、スタンダード&プアーズ、フィッチ、ムーディーズなど外国の格付け会社が中国で子会社を設立し、中国債券の格付け業務を実施することを認めた。この結果、グローバル投資家は、国際標準的な格付けに基づき発行体のリスク評価を行うことが可能になった。近年、中国では、中国株式市場への外国人投資家のアクセスが改善されている。投資家は個別株やさまざまなファンドを通じて、オフショア株式(中国国外で発行される中国株式)とADR(米国預託証券)に投資できる。グローバルなベンチマーク指数におけるオンショア株式(中国国内で発行される中国株式)の構成比率が徐々に高まるにつれ、外国人も投資しやすくなっている。

3. 中国への投資はグローバル投資家に分散投資効果をもたらす。 中国は国内志向型経済であり、金融政策は先進国中央銀行と協調せず、独立性が高い。このため、中国の景気と金利のサイクルは世界の主要市場から乖離することが多い。例えば、2018年は米国経済がトレンド以上に拡大し、FRBが100ベーシスポイント(bp)の利上げを実施した一方で、中国人民銀行は中国経済の減速を受けて預金準備率を250 bp引き下げた。その結果、米国では債券利回りが上昇し、中国では低下した。中国の株式市場も分散投資の効果が期待できる。5年間の週次データに基づくと、MSCIチャイナAオンショア指数はMSCI新興国指数との相関が0.84、MSCI米国指数とは0.97を示しているのに対し、MSCIオール・カントリー・ワールド指数(ACWI)との過去の相関は0.5である。

よって、中国の資産をグローバル・ポートフォリオに組み入れることは、分散投資の観点から有効といえる。また、中国市場へのエクスポージャーはリターンの向上にもつながると考えている。例えば、中国のデジタル経済関連セクターは、中期的に年平均成長率が20~40%に達するとみている。

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本稿は、UBS AG / UBS Securities Japan Co., Ltd.が作成したUBS House View-Weekly Global / Weekly -Regional View(2021年3月8日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年3月11日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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