マンスリーレター12月号

転換点となる年

「感染(infections)の年」、「接種(injections)の年」、そして「インフレ(inflation)の年」を経て、我々は「転換点となる(inflections)年」を迎えようとしている。これが先日発表したばかりのYear Ahead 2023のテーマとなるタイトルだ。

「感染(infections)の年」、「接種・流動性注入(injections)の年」、そして「インフレ(inflation)の年」を経て、我々は「転換点となる(inflections)年」を迎えようとしている。これが先日発表したばかりのYear Ahead 2023のテーマとなるタイトルだ。

年末に向け、米連邦準備理事会(FRB)による政策転換と経済のソフトランディング(軟着陸)への期待から、相場は上昇を続けている。これまで模様眺めをしてきた投資家の市場への再参入も追い風となった。だが高インフレ率、金利の上昇、経済成長率の鈍化など厳しい状況が続く中で、我々はディフェンシブ株とバリュー株、インカム収入の機会、安全通貨、そしてオルタナティブ(代替)資産による分散投資を推奨する。

さらに先を見据えると、2023年にはインフレ率、金利、経済成長率がいずれも転換点を迎え、これらをうまく捉えることが、来年の投資に成功するための鍵となるだろう。

2023年は、時間の経過とともにインフレ圧力が弱まり、各中央銀行は金融引き締めから金融緩和へと政策を転換し、現在鈍化している経済成長率は底打ちすると考える。

したがって、長期の投資目標達成のために、規律を守り忍耐強く投資を続けている投資家は報われるだろう。そして、現在キャッシュを保有して相場変動を回避している投資家は、リスク資産投資を再開するタイミングと方法について計画しておく必要があるだろう。

相場変動を乗り切る

ここ数カ月は、今後1年に予想される市場の力学が明確に示され、厳しい現実の世界と、より良い未来への希望との間で市場が揺れ動いた。

企業業績の悪化や金融引き締めへの懸念から、市場は下落圧力にさらされてきた。だが、10月の消費者物価指数(CPI)の低下を受け、投資家の転換点の訪れへの期待感から株式と債券は急反発し、米ドルは大幅安となった。中国の経済活動再開への期待も市場に勢いを与えた。

だが、こうした春到来の兆しにもかかわらず寒さをもたらす悪天候が予想され、さまざまなリスクが高止まりしている。

第1に、FRBは利上げを継続すると言い続け、インフレ抑制のために金融を引き締め過ぎるリスクを受容している。第2に、景気指標によればインフレ率はピークを越えた模様だが、だからといって目標水準までスムーズに戻るわけではなく、労働市場が逼迫してインフレ率が今後も高止まる可能性がある。第3に、企業業績は、金融引き締め政策の遅行する累積的な影響を依然受けているため、今後数カ月は下押し圧力にさらされる可能性が高い。そして第4に、中国では2023年半ばから経済活動が再開すると我々はみており、最近の政府発表もその見方を裏付けている。一方で、中国政府は冬季の感染拡大への対抗措置としてロックダウンを継続する方針を示している。つまり、この世界第2位の経済大国は低成長が続くということだ。

こうした経済環境の下では、リスク回避型の投資家も、リスク選好型の投資家も、さまざまな課題に直面する。

第1に、キャッシュを保有して相場変動を回避している投資家は、重要な転換点に到達したときに大幅な上昇機会を逃す可能性がある。最新のインフレデータが持続的な反発を促すのに十分とは考えないが、これまでの市場の反応は、転換点付近での反発は急激で大幅なものになり得ることを示している。今日の市場で十分投資していない投資家は、持続的な反発が来たときにそれを逃すリスクがある。

第2に、売買を頻繁に行う投資家は、個別データに過剰反応するあまり、弱気相場の中での一時的な反発局面にはまってしまうことになりかねない。米国のインフレ率減速を受けた最近の急激な相場上昇は、年末の上昇を逃すのではないかとの投資家の不安を示すものだ。だが、景気指標が再び悪化すれば、反発は長続きしない可能性がある。

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本稿はUBS AGが作成した“Monthly Letter: A Year of Inflections”(2022年11月17日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年11月24日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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