ドル円

中期的には下落基調

ドル円は7月初めの162円から8月初めの141.7円へ急落した後、ここ3週間で143.5~149.5円のレンジ内に収斂している。我々はいくつかの理由で、ドル円が今後3カ月にわたりこのレンジ内にとどまる可能性が高いと考えている。

  • 2024年12月のドル円予想を147円、2025年3月を143円、同6月を140円に据え置く。新たに2025年9月の予想を追加し、138円とする。
  • ドル円はここ数週間で143.5~149.5円のレンジ内に収斂しており、今後3カ月にわたりこのレンジ内にとどまると予想する。

ドル円:短期的には安定的に推移するが、中期的に下落基調

ドル円は7月初めの162円から8月初めの141.7円へ急落した後、ここ3週間で143.5~149.5円のレンジ内に収斂している。我々はいくつかの理由で、ドル円が今後3カ月にわたりこのレンジ内にとどまる可能性が高いと考えている。第1に、為替市場における投機的な円のポジショニングはネットで若干のロングポジション(買い持ち)にあり(図表1)、ネットの円ショートポジション(売り持ち)が再構築されるリスクが高まりつつある。世界的なリスクセンチメントの安定を背景に、資金調達通貨として円を使用することに対する市場の関心が再燃すればなおさらである。第2に、米国の金利市場が、米連邦準備理事会(FRB)が2024年末までにおよそ100ベーシスポイント(bp)の利下げを実施すると織り込み済みであることも、ドル円の短期的な下振れリスクを抑える可能性がある。第3に、ドル円は日米間の10年国債実質利回り差に収斂してきた(図表2)。これにより、ドル円の下値余地はさらに制限される可能性がある。

2024年末のドル円を147円とする我々の予想に対する下振れリスクは、今後発表される米国経済指標(特に9月6日の非農業部門雇用者数)が予想を下回ることで米国の景気後退入りをめぐる懸念が再燃し、ドル円が8月初めに付けた141.7円の底値を再び試す展開になることだ。もう1つの下振れリスクは、9月27日の自民党総裁選に関連している。候補者のうち石破茂元幹事長は、日銀が金融政策の正常化を継続する必要があるとみており、同氏が総裁の場合は円高要因になるだろう。

我々はドル円が短期的には安定的に推移するものの、中期的には下落基調をたどり、2025年3月に143円、6月に140円、9月に138円を予想する。FRBは今後12~18カ月にわたり一貫して政策金利の引き下げを続ける可能性が高く、日銀による段階的な利上げも相まって日米間の金利差が縮小するため、中期的にはドル円は下落する可能性が高い。

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本稿はUBS AG Singapore BranchおよびUBS AG Hong Kong Branchが作成した“USDJPY : Longer-term downtrend intact”(2024年8月27日付)を翻訳・編集した日本語版として2024年9月2日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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