ドル円

日米金利差とドル円の動きが一時的に乖離

最近の日米金利差縮小にもかかわらず、ドル円は殆ど下落していない。米国経済が底堅く推移する可能性がある中、当面は145~151円のレンジで高止まりし、中期的に徐々に下落すると我々は予想する。

  • 最近の日米金利差縮小にもかかわらず、ドル円は殆ど下落しておらず、短期的に145~148円に向けて下落する余地がある。
  • とはいえ、ドル高が長引くことで、ドル円は2024年1-3月期(第1四半期)まで145~151円のレンジで高止まりするだろう。中期的(2024年下期)にドル円は140~145円まで徐々に下落すると予想する。

ドル円は直近レンジの高値圏で推移

ここ最近、米国債利回りが低下する中、ドル円は想定よりもかなり高い水準で推移している。最近の日米金利差縮小が実際に示唆するのは、ドル円が現在の150~151円ではなく、145~148円近辺まで下落するということである。この乖離は、特に米国経済が当面底堅く推移する可能性がある中で、最近の米金利の急低下の持続可能性について市場が懐疑的にみているからだろう。同時に、日本の政府高官からの口先介入が不十分なことも、為替市場がドル円の次の節目を引き続き試す展開をもたらしている。

全体としてみれば、2024年第1四半期までドル円は145~151円で高止まりすると予想しているが、その後2024年下期に140~145円に向けて徐々に下落するだろう。現在の151~152円が上値とみており、ドル円は日米金利差の縮小にあわせて、145~148円に向けて下落する余地があると考える。さらに、152円を超えた場合、日本の政策当局による新たな口先介入や為替介入に向けた準備としてレートチェック(金融機関に対する為替相場水準の照会)を行う可能性がある。また、米連邦準備理事会(FRB)と米財務省が長期金利の上昇を注視していることから、米国10年国債利回りが再び上昇し、5%を超えるリスクは後退している。

中期的にドル円は、2024年下期に140~145円に下落するものと引き続き予想する。米国の経済成長が最終的に鈍化すれば米金利が低下し、円キャリートレードの魅力が薄れるだろう。また、大半の主要中銀が利下げを示唆するか実際に開始する可能性が高い環境下では、日銀のさらなる金融政策正常化がG10通貨に対して円を下支えするとみられる。我々は日銀が2024年第1四半期に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤廃し、同第2四半期に政策金利を-0.1%から0%に引き上げると予想する。

投資判断

見通し:ドル円は短期的に145~151円のレンジで推移する可能性が高いが、2024年下期には140~145円に下落するだろう。

レンジ:米ドルが152円を超えてさらに上昇した場合、財務省が口先介入を強める可能性がある。

リスク要因:金利を低く抑えながら為替の安定を図るという日銀の試みは矛盾しており、日銀がどちらを選択するか市場が試す可能性がある。

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本稿はUBS AG Singapore BranchおよびUBS Switzerland AGが作成した“USDJPY: Temporary divergence from yield differentials”(2023年11月10日付)を翻訳・編集した日本語版として2023年11月14日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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