ドル円

経済指標は堅調、日銀は政策修正に動くか

ドル円の予想について、2023年9月末を125円、12月末を122円に修正し、米ドル安予想を後ずれさせた。2024年3月末は120円に据え置いた。

  • 我々は各四半期末のドル円の予想について、2023年9月末を125円(従来予想は122円)、12月末を122円(同120円)と米ドル安予想を後ずれさせ、2024年3月末を120円に据え置いた。
  • ドル円は、過去数週間に発表された米国経済データが堅調だったことに下支えされた。しかし、日本の経済データも市場予想を上回ったことから、日銀は金融政策の正常化に向けた動きをとると考える。
  • ドル円については中期的な米ドル安見通しを維持する。

経済データは日米ともに堅調

過去数週間に発表された米国の主要経済データ(米サプライマネジメント協会(ISM)製造業・非製造業景況感指数、非農業部門雇用者数、消費者物価指数(CPI)、新規失業保険申請件数など)は市場予想を上回って堅調となり、日米金利差が拡大したことからドル円は上昇した(図表1参照)。米債務上限交渉が進展するとの見方(本稿執筆時点では最終合意には至っていない)も米金利の上昇につながった。

米国10年国債利回りは5月初め以降3.42%から3.67%へ約25ベーシスポイント(bp)上昇した。一方、日本の10年国債利回りは月初来ほぼ横ばいで0.4%近辺を推移した。日本の経済データは2023年1-3月期GDP成長率が前期比年率+1.6%(市場予想は+0.8%)となり、コアコアCPI(生鮮食品およびエネルギーを除く)が前年同月比で4.1%(市場予想4.2%とほぼ同水準)上昇し、42年ぶりの高水準に達するなど一段の改善をみせながらも、利回りは変化しなかった。

経済データが堅調ながら日本国債の利回りが上昇しないのは、4月28日の日銀金融政策決定会合での植田総裁のコメントに基づく、日銀はイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)政策の修正を急がないという債券投資家の認識が原因と考える。しかし我々は、直近発表された堅調な日本の経済データから、日銀は今年7月から10月の間のどこかの時点で10年国債利回りの上限を現行の0.5%から少なくとも0.75%まで引き上げることによりイールドカーブ・コントロール政策を修正すると考える。日銀の金融引き締めに加え、米国経済の減速下で年後半に米連邦準備理事会(FRB)が利下げに転換する見通しが高まったことで、ドル円は下落に転じるとみている。このため、中期的には米ドル安見通しを維持する。

投資判断

見通し: ドル円は2023年下期に120~125円に下落すると予想する。

境界線: テクニカル的には、ドル円は主な上値抵抗線である 1 米ドル=138円を上抜けしたことから、次の上値抵抗線140 円を試す可能性がある。

リスク要因: 米国で予想以上に強い経済指標が長く続くようであれば、円高ドル安基調入りは後ずれする可能性がある。

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本稿はUBS AG Singapore Branch、UBS Switzerland AGおよびUBS AG Hong Kong Branchが作成した“USDJPY: Japan data keeps BoJ on track to normalize policy”(2023年5月22日付)を翻訳・編集した日本語版として2023年5月25日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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