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株式・債券が同時急落

13日のS&P500種株価指数は、先週の急落に続き3.9%下落し、1月につけた史上最高値から20%以上下げた。

13日のS&P500種株価指数は、先週の急落に続き3.9%下落し、1月につけた史上最高値から20%以上下げた。高インフレが継続し主要中央銀行が一段と積極的な金融引き締めを余儀なくされるとの不安感は、債券市場にも打撃を与えた。米国2年国債利回りは33ベーシスポイント(bp)上昇して2007年以来の高水準となる3.38%をつけ、利回りは年初からおよそ2倍に拡大した。

2年国債利回りも上昇して10年国債利回りをわずかに上回り、過去に景気後退の先行指標とされてきた逆イールドが生じた。10年国債利回りは21bp上昇して3.36%となった。

投機色の強い資産はさらに激しく売られており、暗号資産の米大手融資会社が極端な市場環境を理由に出金と送金を一時凍結したため、ビットコインが20%近く急落した。

10日に発表された予想外に高いインフレ指標が、こうしたリスクオフムードを加速させた。5月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.6%上昇して1981年以来の高い伸びとなり、インフレ率は3月にピークを打ったとの幅広い憶測を打ち消す格好となった。また、ミシガン大学が発表した長期期待インフレ率は3%から3.3%に急上昇した。期待インフレ率が上昇しつつあり、米連邦準備理事会(FRB)がさらにインフレ抑制に苦戦するとの懸念が高まった。

週初に発表された経済指標も、世界的に景気後退圧力が高まっていることを示す内容だった。4月の英国の国内総生産(GDP)は3月に続き予想外のマイナス成長となり、新型コロナウイルス感染拡大が始まって以降初めて2カ月連続で減速した。一方、中国のゼロコロナ政策も依然として投資家の懸念材料だ。北京市当局は、市内の行動制限を緩和したわずか1週間後に、感染再拡大の封じ込め措置実施に動いている。

この状況は何を意味するか?

市場は今、FRBによる年内の金融引き締め幅の予想を引き上げている。フェデラルファンド金利先物は、年内に合計3.5%の利上げを織り込んでいる。ウォールストリート・ジャーナル紙は13日午後、今週14~15日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRBが0.75%の利上げを検討する可能性があると報じた。これにより2022年の合計利上げ幅は4月初めの2.4%程度から上昇し、6月9日に市場が織り込んでいた水準よりも0.75%ほど高くなる。

とは言え、5月のCPIは上振れしたものの、食品とエネルギーを除くコアCPIは、ピークをつけた3月の6.5%から6%に鈍化している。また、テレビやスマートフォンなど一部品目では価格上昇に歯止めがかかったか下落に転じている。したがって、インフレは依然として鈍化すると見込まれるが、特に夏場にガソリン価格が一段と上昇する可能性もあり、想定していたよりも減速ペースは鈍いだろう。

にもかかわらず、米国10年国債利回りが3.5%に上昇したことは、FRBがさらに後手に回るかもしれないとの市場の不安心理が高まっている現れだ。そうなれば、FRBがインフレ抑制という「勝利宣言」をし、利上げペースを和らげる余地が乏しくなるだろう。結果として、FRB によって今後6カ月以内に景気後退がもたらされるリスクが上昇したと我々は考える。

FRBの直近の経済予想も公表される今月のFOMCは、金融市場の見通しに大きな影響を与えることから非常に注目されている。投資家は、FRBの決定に基づき市場予想の修正の必要性を検討するため、ここ数日は値動きの荒い展開が続くとみられる。

投資見解

相場は値動きの荒い展開が続いており、今後もこの状況が続く可能性が高いことから、投資家が自身の戦略的投資計画を堅持できるかどうかが試される。こうした状況下では、包括的な長期の投資計画を堅持し、我々のLiquidity. Longevity. Legacy.戦略(流動性戦略、老後戦略、資産承継戦略)*の考え方に沿った投資判断を行うことがとりわけ重要と考える。

今後3~5年間に必要となる支出に充てる資金をLiquidity.戦略で確保しておくことで、当面の支出ニーズに安心して対応することができる。また、売られすぎから生じる投資機会や「セキュリティ(安全保障)の新時代」などの中長期的な投資機会をとらえることも可能となる。

Liquidity.戦略は、株式リスクやクレジットリスクの影響を受けにくい資産、つまりキャッシュ、債券、借入枠などで構成する。投資家には、目先の資金ニーズに合わせ、質の高い債券を様々な残存期間にわたって均等に組み入れることを勧める。こうしたラダー型の債券ポートフォリオにより、高利回りを確定しつつ、長引く金利の変動に対する耐性を高めることができる。

こうした市場環境を乗り切るため、次のような投資戦略を検討することを勧める。

バリュー株に投資する。我々は3月に株式全体の見通しを推奨から中立に引き下げた上で、銘柄を厳選し、グロース株よりもバリュー株を推奨している。インフレ懸念はあるものの、これは株式市場全体に均等に影響するものではない。また、過去を振り返ると、インフレ率が3%を上回る環境下ではバリュー株がグロース株をアウトパフォームしてきた。そうした中で、我々はエネルギー・セクターと英国株式を推奨する。これらはともにバリュー株式の比率が高く、リターンは今年に入って市場全体をアウトパフォームしており、その傾向は今後も続くとみている。

ポートフォリオの防衛を強化する。米国株式市場の予想株価変動率を表すVIX指数は、10日の取引開始時点の約26から13日には約34に上昇しており、S&P500種株価指数の日次変動率が平均2%を超えることを示唆している。こうした高いボラティリティの影響を緩和するために、高クオリティ銘柄、高配当銘柄、ヘルスケア銘柄などに注目したい。これらはいずれもポートフォリオの変動を抑えるのに寄与し、景気後退時にアウトパフォームする可能性が高い。また、利回りが上昇していることで、短期デュレーション(残存期間の短い)の投資適格債など債券の一部にも投資妙味が出てきたと考える。これらの債券は、ポートフォリオの耐性の強化にも寄与するとみている。

オルタナティブ(代替)資産で分散投資を図る。本来ならば相関性の低い株式と債券の間で相関性が高まっている昨今、保有資産の分散を図ることはこれまでよりも難しさを増している。そこで、相関性の低いリターンを提供できる潜在性のあるヘッジファンドが注目される。また、ヘッジファンド戦略(特にマクロ戦略)の中には、景気後退シナリオ下で優れたパフォーマンスを上げられるものもある。また、プライベート市場にも投資機会が生じている。過去を振り返ると、公開市場のバリュエーションが低下した後にプライベート市場に投資した場合、好調なリターンにつながっている。米大手投資管理会社ケンブリッジ・アソシエイツによると、1995年まで遡る過去実績に基づくと、MSCIオールカントリー・ワールド指数(MSCI ACWI)のピークから1年後に組成されたグローバル成長バイアウト・ファンドの年間平均リターンは18.6%を記録している。一方、公開株式がピークに達する2年前に投資が開始されたファンドの同リターンは8%にとどまっている。インフラストラクチャー、不動産、プライベート市場などの資産は、ポートフォリオのインフレ耐性を高める効果が期待できる。

*時間軸は様々です。戦略はお客様の目標・目的と適合性によって変わります。 このアプローチは、資産構築あるいは何らかの投資利益の達成を約束または保証するものではありません。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Stocks and bonds slide in tandem”(2022年6月13日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年6月14日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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