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米国株反落 ボラティリティは続く

高インフレが企業の利益率を圧迫し、また中央銀行が金融引き締めを積極化させるとの懸念が再燃したことから、18日の株式市場は再び値動きの激しい展開となった。

何が起きたか?

高インフレが企業の利益率を圧迫し、また中央銀行が金融引き締めを積極化させるとの懸念が再燃したことから、18日(水)の株式市場は再び値動きの激しい展開となった。S&P500種株価指数は前日2.0%上昇したが、18日には4.04%の下落に転じた。一方、米国10年国債利回りは経済成長の減速懸念から10ベーシスポイント(bp)低下し、2.9%となった。

景気見通しを巡る先行き不透明感が高まるなか、市場のボラティリティが増大しており、センチメントは新たな情報に反応して急転換した。18日の株価下落は、高インフレが企業利益と消費者需要に及ぼす影響への不安感が主な要因となったようだ。米小売大手の株価は大幅急落した。利益予想が達成できなかったことや、燃料・輸送コストの上昇に加え消費支出の対象が家具やテレビなどのステイホーム関連製品から予想以上にシフトしていることによる利益率低下への警戒が嫌気された。これは他の米大手小売企業株価の下落要因にもなった。米大手スーパーマーケットチェーンも17日の決算発表で利益率低下の可能性を示した。

また、インフレが再び注目を集めた。英国の消費者物価指数(CPI)は3月の前年同月比7%から4月は同9%へ上昇し、40年ぶりの高水準を記録した。4月のユーロ圏CPIの改定値は前年同月比7.5%から7.4%にわずかに下方修正されたが、1999年のユーロ発足以降最も高い水準であることに変わりはなかった。

企業の決算発表とインフレデータは、中央銀行の金融引き締め、ウクライナ紛争、中国のパンデミック関連のロックダウン(都市封鎖)を背景にすでに広がっていた世界経済リスクへの懸念を強める要因となっている。17日に公表されたパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のインタビュー発言は、これまでと比べて特にタカ派色が強まったわけではなかったものの、インフレを抑制するために必要であれば、「躊躇なく」経済成長を抑制する水準にまで金利を引き上げることを強調した。市場は現時点で、FRBが2022年末までに約280bpの利上げを行うと織り込んでいる。

4月の米住宅着工件数は前月比0.2%減少し、受注残は1974年以来の高水準に達した。最近の住宅ローン金利上昇が住宅関連の活動と価格にどの程度影響するかはまだ明らかではない。米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)のデータによると、住宅ローンの30年固定金利は5月12日の週の1週間平均が5.3%となり、2009年以来の高水準を記録している。

今後の展開

株式市場は年初以降、下落基調をたどっているが、一因として実質金利がこれまでの大幅なマイナスからプラス圏に浮上したことが挙げられる (米国インフレ連動債の10年利回りは現在17bp)。金利が上昇すると、株価バリュエーションの魅力は薄れる。

インフレの長期化が鮮明になるに伴い、市場の懸念は、インフレが金利に及ぼす影響にとどまらず、FRBによる利上げを要因としたリセッション(景気後退)の可能性へと広がっている。

17日に発表された米小売売上高は市場予想を上回り、消費需要が旺盛であるとの見方を裏付けた。しかし、18日の株式市場では生活必需品銘柄が下げを主導する展開となり、債券市場では国債利回りが低下した。こうした展開から、インフレが消費需要、ひいては経済成長に及ぼす影響や、消費支出が財からサービスへと急速に移行する中で、小売企業の業績に影響が及ぶおそれが依然として残っていることが示唆される。

ただし、足元で過去最高水準にある企業の利益率が低下したとしても、業績の下振れリスクは少なくともある程度はすでに織り込み済みだ。1992年以降のMSCIオールカントリー・ワールド指数と企業業績のコンセンサス予想の推移を見てみると、グローバル株式には年末までに10%の減益予想が織り込まれているようだ。一方で、ボトムアップによるコンセンサス予想は現在10%の増益となっている。また、1956年以降の景気後退局面における天井から底までの減益率は平均で20%である。

投資見解

最近のこうした変動の激しい相場展開から、相場のタイミングを計ろうとしても結果的に割高なタイミングをとらえるなどリスクが高まる可能性がある。高値と底値のタイミングを知ることはほぼ不可能であり、また底値を避けようとして市場の回復局面を逃す可能性もある。よって、足元のボラティリティ局面においては冷静に投資を継続することが最善策であると考える。株価については年末までに現在の水準より上昇すると予想する。

FRBの利上げペース、およびその影響により米国経済がリセッションに陥る可能性、ウクライナ紛争や中国の新型コロナ感染拡大によるロックダウンなどの見通しがより明確になるまでは、荒れた相場展開が続く可能性が高い。

足元の先行き不透明感の高い環境下では、1つ目に、高インフレと利上げ局面でアウトパフォームする傾向にあるバリュー株を推奨する。2つ目に、景気の変動の影響を受けにくいヘルスケア株を組み入れることで、リセッション・リスクを低減することができると考える。3つ目に、コモディティとエネルギー株にエクスポージャーを取ることで、地政学リスクを抑えることができると考える。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Stocks remain volatile as rally fades”(2022年5月18日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年5月19日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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