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弱気相場入り目前からの反発

13日の市場は、米連邦準備理事会(FRB)による利上げを要因としたリセッション懸念が少なくも一時的に後退したことを背景に、株式市場は上昇した一方、債券市場は下落した。

何が起きたか?

13日(金)の市場は、米連邦準備理事会(FRB)による利上げを要因としたリセッション(景気後退)懸念が少なくも一時的に後退したことを背景に、株式相場は上昇した一方、債券相場は下落した。株式市場では一般消費財と情報技術を筆頭に全セクターが上昇し、S&P500種株価指数は2.4%、ハイテク銘柄主導のナスダック総合指数は3.8%上昇した。

米国10年国債利回りは7ベーシスポイント(bp)上昇して2.93%、2年国債利回りは1bp上昇して2.59%となった。フェデラルファンド(FF)金利先物12月限は年内262bpの利上げを織り込んでおり、また政策金利が2023年12月に3%でピークを迎えることを織り込んでいる。

米ドルは反落し、13日のドル指数(DXY) は-0.4%となったが、依然として約20年ぶりの高水準に近い水準にある。

経済データの面では新たな好材料には欠けたものの、パウエルFRB議長が今後2回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で各50bpの利上げを想定しているとの見方を強調したことを受け、市場に安心感が広がった模様だ。

S&P500種は、13日には上昇したものの、週間ベースでは6週連続の下落となり、年初来では15.6%のマイナスとなっている。前日の日中最安値は、1月につけた史上最高値より20%安の水準に接近した。

11日に発表された4月の米消費者物価指数が前年同月比8.3%と、3月の同8.5%からわずかな低下にとどまり、市場予想ほどには低下しなかったため、75bpの利上げの必要性が高まるとの懸念が再浮上していた。

今後の展開と投資見解

12日の安値から、S&P500種は4.3%、ナスダック総合は6.3%上昇している。この反発のスピードは、市場のタイミングを計ろうとしても時間がかかるうえ損失を被る可能性があることを大半の投資家に思い起こさせる。投資家のセンチメントは移ろいやすく、金利(rate)、景気後退(recession)、リスク(risk)の3つのRがより明確になるまでは、荒れた相場が続く可能性が高い。したがって、高インフレ、利上げ、高ボラティリティという環境でアウトパフォームすることが期待されるバリュー株、コモディティ、ディフェンシブ銘柄のポジションを高めることを推奨する。

金利。投資家は、中央銀行に対する積極的な利上げへの圧力が弱まる兆候を注視するだろう。政策金利の予想上昇ペースが鈍化するには、インフレが着実に低下しているという確証が必要となる。4月の米消費者物価指数(CPI)は、市場予想ほどには減速しなかったものの、低下トレンドが視野に入ってきたことを示唆する初期の兆候となった。パンデミック下で急増した商品需要が鈍化するとともに、昨年基準値が低い数字だったことによるベース効果も薄れ、インフレ率は年後半にかけて低下すると予想する。

ポジションインフレ率が低下していると市場が確信するには、より多くのデータが必要となろう。当面は高インフレと利上げ局面でアウトパフォームする傾向にある株式、特にグローバル・エネルギー株、英国およびオーストラリアの株式など、バリュー株のポジションを推奨する。

景気後退(リセッション)。 景気後退を回避できるという確信度の高まりも、リスク許容度を引き上げる要因となるだろう。だが、最近の経済指標はまちまち、または悪化しており、米国経済は2022年1–3月期、英国経済は3月にマイナス成長となった。エネルギーや食品価格の上昇を受けて消費者が財布の紐を引き締めるとみられることから、足元の高いインフレ水準もまた、企業利益や消費支出に対する懸念につながっている。

ポジション今後12カ月、米国は景気後退を回避し、2022年および2023年も企業業績は引き続き伸びるというのが我々の基本シナリオだ。しかし、こうした明るい見通しを確信するには、消費者信頼感、小売売上高、製造業およびサービス業景況指数を見極めなければならないだろう。

したがって、成長が予想に届かなかったとしても相対的にアウトパフォームするとみられるディフェンシブ色の強いセクターへの戦術的なポジション追加を推奨する。1つの選択肢としてグローバル・ヘルスケア株式が挙げられる。医薬品分野は伝統的に、景気減速やリスクオフ機運が強まる時期に比較的底堅く推移している。

リスク。リスクの低下、特にロシアによるウクライナ侵攻や中国のロックダウンにかかるリスクの低下も、不安を和らげる一助となるだろう。中国の厳格なゼロコロナ政策が機能しているか、あるいは、新型コロナの抑制策をより緩やかな措置に切り変えるかのいずれかの兆候が見られれば、世界の経済成長とサプライチェーンに対する懸念を和らげる公算が大きい。我々は、追加景気刺激策が打ち出されると予想している。中国人民銀行は15日、初めて住宅を購入する人向けに住宅ローン金利を引き下げると発表した。同じく、ウクライナでの停戦に向けた進展や、北大西洋条約機構(NATO)とロシアの間の段階的な緊張緩和があれば、これもまたボラティリティを下げる可能性がある。とは言え、最近のフィンランドのNATO加盟申請というニュースにより、当面は高い緊張状態が続くだろう。

ポジションコモディティにエクスポージャーを取ることで、投資家は地政学的リスクを一部抑えることができると考える。ウクライナ情勢が一段と激化すれば、コモディティ価格も同時に急騰するだろう。 また、米ドルに対する強気の見通しを維持する。安全資産への逃避もあり、短期的に一段と強含む可能性がある。米ドルはここまで急速に値を上げてきており、この状況が続く場合、特にユーロと人民元に引き続き逆風が吹く場合には、ユーロ/米ドルが1ユーロ=1米ドルのパリティを試すこともあるだろう。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Back from the bear market brink” (2022年5月15日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年5月16日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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