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米国株急落、IT 決算、ウクライナ情勢に警戒

S&P500 種株価指数は26 日(火)、米大手企業決算、ウクライナ情勢悪化、中国のロックダウン(都市封鎖)措置への懸念から2.8%下落した。

何が起きたか?

S&P500 種株価指数は26 日(火)、米大手企業決算、ウクライナ情勢悪化、中国のロックダウン(都市封鎖)措置への懸念から2.8%下落した。ハイテク企業の比率が高いナスダック総合指数が特に売られ、4.0%下落した。投資家が大手IT 企業の1-3 月期決算発表を前にして警戒姿勢を強めたことが背景にある。投資家センチメントが悪化しやすい状況にあることから、何らかの失望材料が出れば市場は反応しやすくなるとの見方が広がった。S&P500 種は11 セクターの内、10 セクターが下落。特に一般消費財・サービス、情報技術、コミュニケーション・サービス・セクターが大きく売られた。

ウクライナ危機をめぐるロシアと西側諸国との対立激化の兆候も、不安要因の1 つに加わった。米国主催の国際会議が26 日に開かれ、西側諸国が一致してウクライナへの大型兵器の供与を拡大すると表明した。これまで大型兵器支援に踏み切れなかったドイツも今回大きく方針転換し、軍事支援強化に同意した。対するロシア側も、ラブロフ外相が核戦争の危険性を「過小評価すべきではない」と述べ、西側のウクライナ軍事支援をけん制した。また、ポーランドは2022 年末までにロシア産天然ガスの輸入を停止する意向を表明していたが、26 日、ロシアがポーランドへの天然ガス供給を27 日に全面停止すると通告したことが報じられたことから、情勢激化の懸念が一層高まった。この報道を受けて、北海ブレント原油価格は3.4%上昇し、1バレル105.78 米ドルとなった。

一方、中国でも、中国株式のCSI300 指数が5%安と1 日の下落率としては2 年ぶりの水準を記録した25 日に続き、26 日も0.8%続落した。中国政府がゼロコロナ政策を強化する兆候が見られたことから、中国経済の減速懸念や供給網の混乱を招くとの警戒感が広がっている。北京市では数百万人の市民を対象にしたPCR 検査が始まったことから、首都北京でも上海のようなロックダウン措置が行われるとの懸念が出ている。

さらに、米連邦準備理事会(FRB)の急速な金融引き締めによる景気鈍化懸念も根強い。これに地政学リスクによる安全資産への逃避も重なり、米国国債の利回りは急低下した。米国10 年国債利回りは8 ベーシスポイント(bp)下げて2.74%となり、先週の日中の高水準2.98%から大きく低下した。米ドル指数(DXY)は0.6%上昇し、2 年ぶりの高水準となった。

今後の展開

地政学リスク、中国のロックダウンによる景気減速懸念、FRBによる引き締め加速をめぐる不確実性などの不安要因が重なり、株式市場は当面変動が大きい状況が続く見通しである。株式市場の期待ボラティリティを示すVIX指数は26日、33を超える水準に再び上昇した。長引く高インフレに対してFRBが厳しい姿勢を示していることから、市場は「データ待ち」の姿勢に入っており、インフレ鈍化見通しを支持する明確な指標が確認されるまでは、FRBまたは地政学リスクが引き金となる景気後退入りへの懸念は当面高い状態が続くだろう。

欧州発の26日のニュースは、ウクライナ情勢の悪化によるエネルギー価格高騰懸念が目先、市場に影を落としていることを改めて認識させた。こうした現状を踏まえ、コモディティとエネルギー株を引き続き推奨する。これらは我々の基本シナリオと悲観シナリオの双方で良好なパフォーマンスを示すと見込まれる。しかし、欧州には、エネルギー要因による景気後退を防ぐ外交および財政政策手段が数多く残されている。現時点での情報に基づく限り、我々の基本シナリオでは欧州の景気後退入りを想定していない。

債券市場もボラティリティが高い状態が続いている。市場が予想するフェデラルファンド(FF)金利の年末時の水準は、先週、2.47%から2.83%に上昇した。しかし、この水準では、市場はFRBの年内の利上げを織り込みすぎた可能性があると我々はみていた。

今週に入って、FF金利先物相場が織り込む2022年末の利上げ幅は12bp縮小、2023年年央も15bp巻き戻している。債券市場の変動が示す通り、市場はFRBの利上げペースの加速だけでなく、減速を織り込むこともある。市場は既にFRBによる金融引き締め加速を相当程度織り込んだため、今後インフレ率が低下し始め、FRBが利上げに対してより柔軟に対応する姿勢を見せた場合、それらを好感して市場のセンチメントが改善に向かう可能性がある。

中国については、主要都市のロックダウンが中国景気を減速させると予想している。我々は今年の中国のGDP成長率は4.2%と予想しており、MSCI中国指数企業の2022年通期の利益成長率予想についても2ポイント引き下げて11%を見込んでいる。

だが、業績予想の下方修正が中国株の上値を抑えるなど、短期的にはセンチメントが悪化しやすいものの、足元のバリュエーションには既に悪材料の大半が織り込まれている。中国株式の現在のPER(株価収益率)は10倍と底に近づいており、市場が予想する12カ月先の利益成長率の低下を既に織り込んでいるとみられる。中国当局は景気浮揚に向けて引き続き財政・金融政策支援を強化するとみられる。よって、我々は、アジアのポートフォリオにおいて中国株式の推奨を維持する。中国市場の一部の分野には引き続き投資妙味があると考える。

米国の企業決算では、先週の動画配信大手の決算発表のように、コロナ禍で巣篭り需要の恩恵を受けてきた企業の一部で、投資家の失望を誘うような決算が発表される可能性は否定できない。しかし、米国の2022年1–3月期の決算シーズンは総じて好調なスタートを切っている。S&P500企業の25%がこれまでに決算を発表し、その内8割が利益予想を上回り、全体として利益予想を6%上回っている。注目のコスト上昇圧力については、過去数四半期と同様、大半の企業はコスト増を消費者に転嫁することに成功している。その結果、利益率は予想を上回り、底堅さを示している。我々は、S&P500種のEPS(1株当たり利益)については、2022年は230米ドル(10%増益)、2023年は245米ドル(7%増益)を予想している。

投資見解

今後6カ月程度の投資期間においては、インフレ率は現在の水準から低下するが、パンデミック前を上回る水準はなお維持するだろう。成長とインフレが減速するなか、株式市場では年末の株価水準は前年を上回ると予想する。市場ではFRBの積極的な金融引き締め観測が織り込まれ、企業業績に影響するリスクも高まっている。よって、インフレ高進、金利上昇、ボラティリティの増大という環境下で堅調なパフォーマンスが見込まれる以下の資産の保有を高めることを勧める。

コモディティ: ブルームバーグ商品指数は年初来29%上昇しているが、MSCI ACワールド指数は11%低下しており、両指数の52週相関係数はゼロにまで落ちている。このようにコモディティは分散投資効果を提供しており、またインフレ高進局面では歴史的にコモディティ全般が好調に推移してきた。今後6カ月間でコモディティ指数にはさらに10%程度のトータルリターンの余地があると我々はみている。投資家にはコモディティの買いポジションの継続、特にアクティブ戦略を勧める。

バリュー銘柄 vs.グロース銘柄: エネルギーなどのバリュー(割安)株は、テクノロジーなどのグロース(成長)株と比べると金利上昇・インフレ高進による負の影響を受けにくい。グロース銘柄の株価には一般的に、将来の利益拡大期待が反映されているからだ。エネルギー銘柄は依然割安であり、足元で株価に織り込まれている原油価格は1バレル当たり70米ドル半ば程度であると思われる。

ディフェンシブ銘柄: 株式ポートフォリオにおいて景気循環銘柄とディフェンシブ銘柄をバランスよく取り入れることを勧める。ディフェンシブ銘柄の中ではエネルギーとヘルスケアを推奨する。医薬品セクターは低成長局面およびリスクオフの投資環境においても比較的底堅く、株価も現在割安とみている。

債券: 債券市場においては、金利の上昇は債券の価値の上昇を意味する。我々は新興国市場の短期デュレーション債券(残存期間の短い債券)の一部についても有望視している。ハイイールド債の中では環境・社会・ガバナンス(ESG)に注力する銘柄に投資機会があるとみる。また、持ち分の売却・換金が一定期間制限されることをいとわず、それによる追加リスクを許容できる投資家には、ダイレクトレンディングも上場市場を上回るインカム獲得機会が期待できる。

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本稿は、UBS AGが作成した“Risk assets sell off”(2022年4月26日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年4月27日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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