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株式市場、3日続落から反発

S&P500種株価指数は3営業日連続で下落した後、15日は2.1%上昇して引けた。

何が起きたか?

S&P500種株価指数は3営業日連続で下落した後、15日は2.1%上昇して引けた。ブレント原油価格は2営業日連続で下落し、ここ2週間で初めて1バレル当たり100米ドルを下回った。15日のストックス欧州600指数は0.6%下落して引けた。金(gold)は1.8%下落した一方、DXYドル指数は横ばいだった。

2月の米生産者物価指数(PPI)は前月比0.8%増と力強い伸びを示したものの、市場予想をわずかに下回った。米国債利回りは、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にほぼ変わらずで推移した。FOMCでは25ベーシスポイント(bp)の利上げが予想されている。米10年国債利回りは2bp上昇して(価格は下落)2.16%となる一方、2年国債利回りは1bp低下して1.86%となった。

ブレント原油価格は15日も下げが止まらず、3月7日につけた日中高値の1バレル当たり139米ドルから下落している。ロシアとウクライナの停戦協議を受けて追加的な供給制約の懸念が和らいだことがその背景だ。

また、欧州のエネルギー企業は引き続きロシア産原油の購入を控えているが、インドが割安価格でのロシア産原油の購入を検討しているとされ、米国、英国およびカナダのロシア産原油の輸入禁止に伴う世界的な供給制約が緩和される可能性がある。また、中国南部のIT集積地である人口約1,700万人の深圳市が、新型コロナの感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)に新たに入ったことなども、目先の石油需要を後退させる公算が大きい。

この状況をどう解釈するか?

ロシアとウクライナの停戦交渉はまだ具体的な成果が見えないが、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟という長年の目標にこだわらず、安全保障の道を模索する用意があると伝わったことで、停戦合意への期待が高まった。

我々の基本シナリオでは、今後数カ月間はコモディティ、特にエネルギー価格は高止まりするが、年後半には下落すると予想する。このシナリオは、停戦合意がまとまり、夏までにNATOとロシア間の緊張が和らぎ、世界のエネルギー・サプライチェーンからロシアを排除する動きが緩慢になることが前提条件となる。

制裁と一部輸入禁止を受けたロシアの石油輸出と生産の減少はまだデータには表れていないが、世界の供給は一段とひっ迫するだろう。他の産油国による増産や各国政府の備蓄放出では、そうした世界的な産油量の落ち込みを相殺することは難しい。一方、世界の石油需要は年後半には過去最高水準に向かうとみている。したがって基本シナリオでは、ブレント原油価格は引き続き高い水準が続き、需給ひっ迫から6月までには一時1バレル当たり125米ドル近辺をつける場面もありうるとみている。だが、年後半には徐々に低下し、年末は105米ドルと予想している。

値動きの荒い展開が続くと見られるが、15日の株価上昇は、相場の潮目があっという間に変わりうることを物語っている。米10年国債利回りは過去8日間で50bpほど上昇しているが、こうした金利上昇から、中央銀行の金融政策が依然として主な市場の変動要因であることがわかる。停戦交渉やエネルギー価格の下落を巡って一時的に楽観論が高まったことから、FOMCでの利上げ決定を前に、市場の注目はインフレと米連邦準備理事会(FRB)へと移った。

FRBは16日のFOMCで25bpの利上げを決定すると予想する。基本シナリオは、我々が想定するエネルギー価格の上昇一服と、経済活動の全面的再開に伴うパンデミック絡みの供給制約の解消が、タイミングは想定より遅れるものの、2022年を通じてインフレ率を徐々に押し下げると予想する。これによりFRBをはじめとする各国中銀は、景気回復を腰折れさせることなく、金融政策を着実かつ緩やかに引き締めることができるだろう。

投資見解

単純にリスク資産を売ることはウクライナ危機への対応として最善ではないとする我々の見解に変わりはない。我々は、長期リターンを重視しつつ、下落リスクに対するプロテクションを提供する戦略を推奨する。ポートフォリオのボラティリティが高まる中では、投資地域、セクター、資産クラスの分散を強化することがさらに重要となる。

不確実性が高まる環境下、市場のボラティリティを切り抜けるために、投資家には次のような投資行動を勧める。

  1. ポートフォリオのヘッジを強化する。ウクライナ情勢を勘案すると、コモディティ全般が効果的なヘッジとして引き続き機能すると考える。我々が現在推奨しているエネルギー株は、コモディティ価格がさらに高騰した場合に、その恩恵を受ける可能性が高い。また、グローバル・ヘルスケア・セクター、ダイナミック・アセットアロケーション戦略などもポートフォリオの下落を低減する手段として検討できる。短期的には米ドルも効果的なヘッジとして機能すると考える。
  2. 利上げのリスクに備える。経済成長へのリスクは懸念されるものの、FRB、欧州中央銀行ともに利上げを継続し、今後もインフレの抑制を優先課題とする方針を示唆している。株式市場では、通常利上げは金融銘柄の追い風となり、またバリュー株はグロース株をアウトパフォームする傾向がみられる。また債券市場では、利回りが魅力的で、利上げ局面でプロテクション効果を発揮する変動利付きの米国シニアローンへの投資を検討できる。
  3. エネルギー移行を捉える。米国はロシア産原油の輸入禁止に踏み切り、EUもロシア産天然ガスへの依存度を下げる計画を打ち出した。各国の動きはエネルギー安全保障と自給への取り組みの重要性が高まっていることを示すものであり、こうしたトレンドは今般のロシア・ウクライナ危機により拍車がかかっている。エネルギー自給の動きは炭素排出量削減への長期的な取り組みとも合致することから、グリーンテック、空気浄化・炭素削減技術等への投資に追い風になると考える。
  4. セキュリティの時代。ロシアのウクライナ侵攻を機に、西側諸国とロシアの間にはさらなる対立と経済的つながりの希薄化が広がり、各国政府の政策に多岐にわたり多大な影響を及ぼすものと思われる。今後はセキュリティが、軍事、サイバーセキュリティ、エネルギー、食糧などの領域において、政府や企業の意思決定に大きな影響を及ぼすようになるだろう。西側諸国はすでに迅速に方向転換を図りつつある。こうした中、サイバーセキュリティ、5G+等のイネーブリング技術など、テクノロジー分野に投資・成長の機会があると考える。
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本稿は、UBS AGが作成した“Stocks break three-day losing streak”(2022年3月15日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年3月16日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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