House View Weekly

経済政策が株価下支え

米連邦準備理事会はテーパリングを決定したが、緩和姿勢は変わらず、株式の一段高が見込まれる。

今週の要点

FRB、テーパリング決定も、緩和姿勢は維持

米連邦準備理事会(FRB)は3日、予想通り、量的緩和の縮小(テーパリング)に着手することを決定した。債券買入額を月額150億米ドルずつ減らし、2022年半ばまでにテーパリングを完了する予定である。パウエルFRB議長は記者会見で、サプライチェーンの混乱が想定以上に米国の物価上昇を長引かせる可能性があると指摘した。だが、FRBは引き続きインフレ率の上昇は「一時的と見込まれる要因」を広く反映しているとの認識を示しており、早期利上げの必要性は示唆しなかった。議長は「今は利上げの時ではない」と明言するとともに、FRBは、経済状況に変化があればテーパリングのペースを調整する用意があるとした。政策当局は、テーパリング開始に伴う市場の混乱を最小限に抑えたい考えで、市場に動揺を与えないよう引き続き注意を払っている。インフレ率の高止まりから経済成長を阻害する早期利上げ観測が高まっているものの、FRBの忍耐強い姿勢はこうした懸念を緩和するだろう。市場を動揺させ株式上昇に終焉をもたらすようなタカ派への政策転換は予想していない。

要点: 堅調な経済成長、好調な企業利益見通し、FRBの慎重な政策運営を背景に、株式の一段高を見込む。我々のS&P500種株価指数の2022年12月末目標は5,000ポイントとしている。エネルギー、金融、米国中型株およびユーロ圏と日本の株式など、世界経済の成長による勝ち組を推奨する。

COP26、出だしは緩やかだが、ネットゼロへの移行路線は揺るがないだろう

第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が英グラスゴーで始まったが、今のところ世界の温室効果ガス排出量削減策についての進捗は限定的である。2030年までに森林破壊をなくすとの共同声明は、歓迎すべきではあるが、実行に移す具体策を伴っていない。だが、会議は11月12日まで続くため、実効性のある対策がこれから打ち出される可能性もある。また、政府、投資家、企業からは温暖化ガス排出削減目標に向けての進捗状況が引き続き報告されている。米バイデン大統領が合意成立を目指している包括経済法案には、5,550億米ドル規模のクリーンエネルギー対策も盛り込まれている。欧州連合(EU)も2030年までに温室効果ガスを55%削減するための政策「Fit for 55」を公表済みである。さらに民間資本の投資も進んでいる。世界持続可能投資連合(GSIA)によれば、2020年の世界のサステナブル投資残高は35兆米ドル(18年比15%増)で、機関投資家の運用資産に占める比率は36%となった。また、電気自動車への需要増に反映されるように、消費者の価値観の変化も、企業が提供する製品・サービスの低炭素化を促している。発言が行動に必ずしも直結するわけではないが、こうした機運に後押しされ、ネットゼロ社会への移行は今後も継続し、グローバルのグリーンテック分野に幅広い投資機会をもたらすものと考える。

要点:温暖化ガス排出ネットゼロ社会への移行は、クリーンエネルギー、エネルギー効率化・デジタル化、電化・蓄電池、バイオエネルギー、グリーン金融など、幅広い分野における投資機会を提供すると期待される。

衆議院議員選挙結果を受けて日本株式に一段高の余地

10月31日の衆議院議員選挙を控え政局不透明感が高まる中、先月の日本株式は主要株式市場の中で唯一下落し、MSCI日本指数のリターンは3.4%低下した。だが、与党・自由民主党は15議席減で踏みとどまり絶対安定多数を確保したため、政治情勢を取り巻く不透明感が大幅に払しょくされ、日本株には遅れを巻き返す道が開けたようだ。岸田首相は11月中旬ごろに「大型経済対策」をまとめる方針で、その規模は20~30兆円(GDP比4~5%程度)になると予想される。増税の可能性についてはトーンダウンしている。大型経済対策は企業業績の効果的な押し上げ要因となり、サプライチェーン問題の解消と円安基調の追い風と相まって、来年の業績回復に寄与するだろう。2022年3月期の企業利益は42%増益と予想するが、この増益見通しはまだ株価に織り込まれていないと考える。また、MSCI日本指数における海外売上高比率は40%超を占めるなど、日本企業は海外からの売り上げの割合が高いことから、世界経済の回復の恩恵を受けるだろう。世界の実質GDP成長率については、今年は6%、来年は5%と予想する。

要点:政治情勢の不透明感後退と大型経済対策への期待から、景気動向に敏感な日本株市場にはさらなる上値余地があるとみており、推奨を継続する。日本のグリーンテック、5G(第5世代移動通信システム)技術関連銘柄や経済正常化の恩恵を受ける企業に投資妙味があるとみている。

経済政策が株価下支え

市場はどう動いたのか?

米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和縮小に着手:FRBは毎月の債券購入額を150億米ドルずつ減らし、2022年半ばまでにゼロとする計画を発表した。FRBのパウエル議長は米連邦公開市場委員会(FOMC)会合後の記者会見でややタカ派的な発言を行い、また焦点のインフレについて高止まりが長引く可能性があることを指摘したが、利上げについては忍耐強く待つことができると断言した。

日本は岸田新内閣が発足:与党自民党は、衆議院選挙で議席数を選挙前から15議席減らしたものの、絶対安定多数の261議席を確保した。

米バイデン政権は上院民主党と薬価で合意:メディケア(高齢者向け公的医療保険)に製薬会社との処方薬の価格交渉を認める新制度のほか、メディケア加入者の薬代年間自己負担額上限の引き下げ、年間薬価値上げの上限設定が合意された。

市場の動きをけん引した要因は何か?

FRBの忍耐強く待つ姿勢は株式市場にとって追い風:インフレ高進と一部中央銀行による金融引き締めの動きがみられたことから、時期尚早の引き締めが景気の腰折れにつながると懸念が高まった。しかし、FRB高官は、事前の想定よりもインフレ高進は長引く可能性があるとしながらも一時的とみる立場を維持した。同中央銀行は、物価上昇に対して早期利上げの必要性を退けた。また、毎月の資産購入縮小額は固定されたものではなく、景気減速の場合は調整する用意があることも確認された。政策当局者は、債券・株式市場に大きな動揺を与えることのないよう引き続き注意を払っている。パウエル議長は「市場を驚かせたくはない」と強調した。FRBの忍耐強く待つ姿勢は、早期利上げへの懸念を和らげ、株式市場の急落につながりうる利回りの急上昇と引き締め的な金融環境の回避に寄与すると考える。

日本の新たな経済対策の早期決定もプラス材料となろう:日本の株式市場は、衆議院議員総選挙を前にして市場参加者の懸念が高まり、主要市場の中で唯一10月に下落した。しかし、選挙結果が判明し、同市場の重石となっていた政治情勢をめぐる不確実性の大半が解消されたことから、今後はアウトパフォーマンスの局面に入るとみている。追加の経済対策にも期待が集まる。新たな財政支出の規模は20-30兆円、GDP比率で4-5%相当になると予想する。また、岸田首相は増税の可能性についてはトーンダウンしている。

米民主党議員の妥協は、ヘルスケア・セクターにとって追い風:法案が通っても、薬価への影響は限定的となるであろう。薬価交渉は、特許がすでに切れている一部の医薬品が対象で、その多くは後発医薬品またはバイオ後続品との競争に直面している。また、薬価引き下げは決められたスケジュールに沿って行われ、米医薬品業界全体の売り上げへの影響は限定的とみられる。一部医薬品の価格が引き下げられる可能性は高まったが、これまでの下院案に比べると今回の妥協案はバイオ医薬品業界にとってプラスであると考える。薬価についての民主党内の合意成立により、「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)法案」の通過を阻む障害が1つ取り除かれた。

これは投資家に何を意味するのか?

先週、S&P500種株価指数は最高値を更新したが、経済対策のプラス効果、高い経済成長率、好調な決算内容が株式市場の一段の上昇を後押しすると考える。エネルギー株、金融株、米国中型株、ユーロ圏株式、日本株式を推奨する。

日本は大型経済対策が企業の利益成長の起爆剤になると考える。経済の再開、景気動向に敏感な市場特性、円安基調が日本株式市場のプラス材料になるとみている。

グローバル・ヘルスケア・セクターも推奨する。これまで規制上の懸念が高まった後の打開局面は、バイオ医薬品セクターのアウトパフォーマンスのきっかけとなった。「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」法案が通過すると同様の結果が期待できるとみている。尚、グローバル医薬品セクターは、グローバル株式(MSCIオール・カントリー・ワールド指数)に対し、予想PER(株価収益率)で現在17%のディスカウントとなっている(過去20年平均は3%のプレミアム)。規制上の透明性が高まり、政治圧力が弱まることにより、今後ディスカウント幅は縮小すると見込む。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2021年11月8日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年11月9日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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