通貨市場

2022年の米ドル上昇余地を探る

2022年12月の為替見通しを新たに追加する。概ねここ数四半期の趨勢と変わらず、幅広く米ドル高が続くと予想する。

  • 今回、2022年12月の為替見通しを新たに追加する。概ねここ数四半期の趨勢と変わらず、幅広く米ドル高が続くと予想する。
  • 新型コロナウイルスに端を発した景気後退により為替は新たなサイクルに突入し、足元は米ドル上昇局面にある。米ドル高基調は来年まで続く見通しである。
  • 米連邦準備理事会(FRB)の引き締めサイクルが米ドルの下支え要因だが、ファンダメンタルズはこの動きとは逆の米ドル下落を示唆している。だが、欧州中央銀行(ECB)や日銀がマイナス金利からの脱却姿勢を示してはじめて、こうしたファンダメンタルズが影響するものと考える。

今回、2022年12月の為替見通しを新たに追加する。概ねここ数四半期の趨勢と変わらず、幅広く米ドル高が続くと予想する。来年の為替動向に影響を与える大きな要因は、米国金利の上昇と、マイナス金利通貨であるユーロ、スイス・フラン、円との金利差拡大になるだろう。積み上がった流動性は利回り商品に流れやすく、これもまた為替に大きく影響すると思われる。最後に、新型コロナウイルス関連の不安から、手元資金は引き続き安全資産に向かいやすいとみられる。以上が米ドル高予想の主な背景である。米国債の利回り上昇と安全資産としての米ドル需要が重なり、利回り面からも安全面からも米ドルの魅力が高まると予想する。

また、我々の見通しは、世界経済は高成長を続けるが、想定外に強かった2020年下期や2021年上期ほどの勢いは失われるとの前提に基づいている。国内総生産(GDP)成長率の加速に加えて、多くの新興国や資源国、貿易黒字国が予想を上回る強い経済成長を示す場合、投資家は通常、米ドルからこうした高成長地域の通貨に資金をシフトする。したがって想定外に経済が好調な局面では、ユーロが反発し主要な新興国通貨が上昇する傾向にある。だが、世界経済成長がピークに達し、財政刺激策が縮小に向かい、FRBがインフレ圧力抑制に向けて利上げ準備に入るに伴い、米ドル上昇の機が熟すと考える。

社会経済および歴史的な理由から、インフレ圧力が高まりやすい国とそうでない国がある。そのため、米国、英国、ノルウェー、ニュージーランドおよび一部アジア諸国が、物価上昇圧力を抑制するために金融緩和策を縮小していることに驚きはない。他の国もこの動きに追随する可能性が高いが、実施までには時間がかかるとみられる。「金融緩和縮小国」の通貨は上昇しやすく、安全資産である点と米ドル市場の広さを踏まえると、上述した通貨の中で上昇の可能性が最も高いのは米ドルと考えられる。

上方リスクと下方リスク

我々はFRBによる早急な利上げを予想しておらず、利上げに向けて第一歩を踏み出すのは早くても2022年末とみている。2年物のスワップ金利は、8月の25ベーシスポイント(bp)から足元ではすでに50bp以上に急騰している。我々のリスクシナリオで想定している通りインフレ率がこの先さらに上昇した場合、FRBが利上げに踏み切る動機が強まり、これが米ドルのさらなるサポートとなるだろう。だが、我々はそれほど相場が変動するとはみていない。FRBの利上げ開始時期が来年か2023年かはさほど大きな問題ではない。重要なのはむしろ、利上げサイクルの終了時期と利上げのスピードだ。利上げが1年に2回よりも、1・四半期に1回の方が、米ドルの押し上げ要因になるだろう。

我々の先行き米ドル高予想に対する主なリスクの1つは、新型コロナの収束時期に対する見通しが外れることであろう。再び都市封鎖(ロックダウン)に陥り、金融緩和の縮小判断を撤回するような事態になれば、米ドルの利回り優位性が低下し、米ドル売りにつながるとみられる。予想外に強い世界経済成長もまた、米ドル高を妨げるリスクである。この場合、投資家は新たな成長地域の通貨を買う動きを強めるため、安全資産としての米ドルの魅力が低下するだろう。

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本稿は、UBS Switzerland AG、UBS AG Hong Kong Branch、UBS AG Singapore Branch、UBS AG London Branch、およびUBS Financial Services Inc. が作成した“Currency markets: Exploring USD’s upside in 2022”(2021年10月21日付)の一部を翻訳・編集した日本語版として2021年10月28日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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