House View Weekly

9月は軟調も、株価はなお上昇を見込む

米国の政治・経済情勢をめぐる懸念が足元で投資家心理を圧迫しているが、こうした市場の警戒感は行き過ぎであり、株価は再び上昇すると我々は予想している。

今週の要点

利回りは上昇するも、株価には一段の上昇余地を見込む

9月のMSCIオール・カントリー・ワールド指数は4.1%下落した。月次リターンがマイナスとなるのは今年1月以来であり、また下落率は米国がパンデミックに突入した2020年3月以降で最大を記録した。早期の金融引き締め、インフレの高進、経済成長の鈍化などへの懸念が広がる中、米国10年国債利回りが月間で15ベーシスポイント(bp)上昇して1.46%となったことが、株式市場の下落の一因となった。エネルギーの供給不足に加え、米議会の財政審議が難航していることも市場のセンチメントの悪化につながった。しかし、こうした懸念は行き過ぎ、ないし早晩薄れる可能性が高く、株式市場は上昇基調を取り戻すと我々は予想している。第1に、過去のデータを見ると、米国10年国債利回りの上昇が3カ月間で100bp未満の場合は株価は上昇し、それよりも速く、かつ大きく利回りが上昇した場合に限り株価は下落している。第2に、中央銀行は金融緩和を継続しており、インフレの高止まりは大きなリスクにはならないとみている。米連邦準備理事会(FRB)は9月の連邦公開市場委員会で、債券購入額の縮小は経済指標の好調が続くことが条件であることを強調し、早期の利上げの可能性については示唆しなかった。第3に、エネルギー価格が高騰しているが、これは一時的な現象であり、それにより主要中央銀行が早期の金融引き締めを迫られたり、消費支出の重しとなる可能性は低いとみている。

要点:金融緩和政策の継続と依然好調な経済を背景に、株式市場は上昇基調を取り戻すとみている。世界景気回復の勝ち組銘柄への投資を推奨する。

財政協議の行き詰まりは解消される見通し

米国のイエレン財務長官は先週の議会証言で、議会が債務上限を凍結するか引き上げない限り、米国政府の手元資金は10月18日頃に枯渇する可能性が高いと警告した。議会では予算、債務上限、財政刺激策など一連の財政審議が行われているが、難航しており、政府機関の閉鎖や米国国債のテクニカル・デフォルト(債務不履行)など、様々な憶測を呼んでいる。審議の行き詰まりは市場にとって悪材料だが、長期的なダメージを残すことなく解決されると我々は予想している。先週後半には、議会が12月3日までのつなぎ予算案を可決し、政府機関の閉鎖の恐れが先送りされるなど、事態に進展の兆しが見られた。さらに、過去の例を振り返ると、政府機関の閉鎖が市場に及ぼす影響は限定的であったことがわかる。1980年以降、米国政府は14回の政府機関閉鎖を経験しているが、閉鎖4週間前から再開後4週間迄で、S&P500種株価指数は平均5%のプラスリターンを出している。また、米国債がテクニカル・デフォルトに陥る可能性は極めて低い。デフォルトに陥った場合に経済、市場、米ドルがどれだけのダメージを受けるかを議会が認識しているためだ。

要点米国の財政対立は珍しいことではないが、各党の瀬戸際政策は、ボラティリティ(変動率)が高まることを除いては、市場に目立った悪影響を及ぼしてはいない。協議の行き詰まりは解消されると我々は予想している。

新総理の下で日本株式に一段の上昇余地

日本株式市場は先週、岸田文雄氏の自民党総裁選出に沸き上がった。外務大臣を務めた経験もある岸田氏の選出は大方の予想通りだったが、これを好感し、MSCI日本指数の9月のリターンが2.8%となるなど、主要株式市場の中で唯一日本市場だけがプラスとなった。我々は、日本株式市場は再び上昇基調を取り戻すとみている。岸田総理は就任演説で、年末までに「数十兆円規模」の経済対策を講じると表明した。また、日銀の超低金利政策の継続も示唆した。長期政策では国家と経済の安全保障、デジタル化の推進、グリーン政策に優先的に取り組むと思われる。さらに、国内でワクチン接種が急加速しており、今や米国を追い抜き、11月までにEUをも追い越すとみられることから、消費の反発につながることが見込まれる。政府は19都道府県に発令していた緊急事態宣言を10月1日に解除した。これを受け、10‐12月期はこれまでに積み上がってきた繰延需要が放出され、支出を押し上げることが予想される。また、第2四半期の企業利益が我々の予想を上回ったほか、営業利益率はすでにコロナ前の水準を超えているにもかかわらず、日本株はいまだ割安に放置されている。

要点:我々はグローバル・ポートフォリオの中で日本株を推奨している。特にグリーンテック銘柄を推奨するほか、5Gイネーブラーや経済正常化の恩恵を受けるセクターにも投資妙味がある。

9月は軟調も、株価はなお上昇を見込む

世界と米国の株式は9月上旬に史上最高値を更新したものの、その後は下り坂となった。MSCIオール・カントリー・ワールド指数は9月に4.1%下落した。月間では今年1月以来のマイナスで、下落率も昨年3月以来の大きさとなった。同指数は7‐9月期(第3四半期)中に1.1%下落し、同四半期中の上昇分も帳消しとなった。主要株式市場の中で9月にプラスとなったのは、我々が推奨する日本市場だけで、MSCI日本指数は9月に2.8%の月間リターンを記録した。ただし、この急上昇は新総理による新たな経済対策への期待が広がったことが大きい。セクター別でも明暗が分かれ、推奨セクターの1つである世界のエネルギー株は、原油価格の8.5%上昇に支えられて9%の値上がりとなった。一方、利回り上昇でグロース株は大幅に売られ、バリュー株が3%軟化したのに対し、グロースは5.2%下落した。米国10年国債の利回りは前月比+22bpの1.49%で9月を終えた。

景気鈍化、中央銀行の引き締め観測、利回りの急進、米議会での審議膠着などをめぐる懸念が足元で投資家心理を圧迫している。しかし、こうした市場の警戒感は行き過ぎであると我々は見ており、株価は再び上昇すると予想している。

各国中央銀行は引き続き緩和的な政策で経済を支える姿勢を示しており、インフレの高止まりも大きなリスクにはならないと我々はみている。米連邦準備理事会(FRB)は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、テーパリング(量的緩和の縮小)は経済指標の好調が続くことが条件であることを強調し、早期の利上げの可能性については示唆しなかった。FRBはインフレリスクが高まっていると指摘したが、パウエル議長はリスクはいずれ「後退」し、「インフレ率は中長期の目標である2%に近づいていく」との見通しを示した。また、エネルギー価格の上昇によって主要中央銀行が早期の金融引き締めを迫られたり、消費支出が抑制される可能性は低い。化石燃料価格のこのところの急上昇は一時的な要因によるものと考えている。原油については、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と主要産油国で構成する「OPECプラス」の8月の産油量が予定外に低下したことや、米国を襲った大型ハリケーン「アイダ」の影響で供給が滞った。だが、これらの影響は徐々に解消しつつあり、OPECプラスの9月の原油輸出は反動増に転じている。天然ガスと石炭については、在庫低下により価格が高止まりする可能性が高いものの、ロシア、南アフリカ、中国で生じた供給混乱が解消に向かうにつれ、来年には価格が低下すると予想している。

金利にはさらなる上昇余地が見込まれるものの、株式の上昇基調は続く見通しである。各国中央銀行が金融政策の正常化に舵を切り始め、あるいは正常化を検討する中、米10年国債の利回りは年末には1.8%に達するとみている。しかし、これは、持続的なインフレ上昇への懸念よりも、健全な経済成長を反映したものと考える。新型コロナのワクチン接種が進捗したことで、感染者数の増加に対し重症化率は比較的低く抑えられており、経済の本格的な再開に向けた動きが今後も継続するとみられる。FRBは景気回復への自信を強めており、経済指標も堅調な状態が続いている。例えば、9月の米国ISM製造業購買担当者指数(PMI)は60台を回復した。1997年以降のデータに基づくと、米10年国債利回りの3カ月間の上昇が100bp以下の局面では、株価は上昇している。株価が下落したのは、それよりも大幅かつ急激な金利上昇がみられた場合のみだ。第3四半期の10年債の利回り上昇は7bpだった。

米国の財政審議の膠着状態は解決される見通しが高い。米国では予算審議での対立は日常茶飯事だが、両党ともに市場の混乱、さらには、テクニカルな債務不履行(デフォルト)という最悪の事態を回避したい考えだ。9月末に政府のつなぎ予算が可決され、政府機関の閉鎖リスクが12月まで先送りされた。過去の例を振り返ると、政府機関の閉鎖に対し市場はおおむね落ち着いた反応を示している。1980年以降、米国は14回の閉鎖を経験しているが、閉鎖期間は平均7日間、最長は2018年12月の34日間だった。市場への影響は限定的で、閉鎖開始の4週間前から閉鎖解除後4週間までにS&P500種株価指数は平均で5%のプラスリターンを上げている。潜在的な影響の規模を考慮すると、米国債がテクニカルな債務不履行に陥る可能性はこの段階では極めて低いと考える。

総じて好調だった第3四半期は9月の不振で幕を閉じる形となった。全体としては、第3四半期は、インフレ圧力は一時的にとどまるとの見方とともに、経済の正常化への自信が高まった。足元の悪材料が後退し、市場の関心が堅調な経済成長と好調な企業収益に移るにつれ、投資家心理は改善すると考えている。これらを踏まえ、グローバル景気回復の恩恵を受ける勝ち組企業への投資を引き続き推奨する。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2021年10月4日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年10月6日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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