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金利上昇でハイテク株中心に反落

米国株式は28日、金利上昇を背景に、ナスダック総合指数が2.8%、S&P500種株価指数が2%下落するなど、大きく値を下げた。

何が起きたか?

米国株式は28日(火)に、ナスダック総合指数が2.8%、S&P500種株価指数が2%下落するなど、大きく値を下げた。米10年国債利回りは6ベーシスポイント(bp)上昇し、先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合以来の上げ幅は25bpに達している。米ドル高も進み、DXYドル指数は0.4%上昇して今年の高値に近づいた。米国市場に先立ち、ストックス欧州600指数も2.2%安で取引を終えた。

セクター別では、ハイテクセクター(3%安)とコミュニケーションサービス・セクター(2.8%安)の下落が特に大きかった。金利上昇によりグロースセクターの将来のキャッシュフローの現在価値が大きく低下することになる。対照的に、バリューセクターと景気敏感セクターは健闘し、エネルギーセクターの終値は0.5%高となった。金融株はこの日に1.6%下落したが、FOMC会合前の水準からは依然4.4%高い。

何が背景か?

今回の株価下落は複数の要因が引き起こした。
• 先週のFOMC会合直後の市場の反応は限定的だったが、市場が当初想定よりも速いペースでの金融緩和の正常化を織り込み始め、米国金利は過去4営業日にわたって上昇し続けた。こうした懸念が強まった背景には、パウエルFRB議長が28日の上院銀行委員会の公聴会で「供給網の制約や労働者の採用難などの制約が予想以上に長引く可能性があり、インフレ率が上振れするリスクがある。高インフレが持続し、深刻な懸念となった場合、物価目標に一致する水準となるよう対応し、政策手段を用いる」と証言したこともある。
• エネルギー市場の需給が逼迫し、一部地域で原油、天然ガス、石炭といった化石燃料価格が数年ぶりの高値、または過去最高値に達した。このため、物価上昇の長期化や成長減速の懸念が高まった。燃料価格が急騰したため、中国の一部では停電が発生している。ブレント原油価格は28日に一時1バレル=80.75米ドルまで上昇した。
• 9月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は109.3と、8月の115.2から低下した。3カ月連続の低下となり、2月以来の低水準となった。コンファレンスボードは、デルタ株の感染拡大で、経済の先行き見通しに対する懸念が強まったとコメントしている。
• 上院共和党は27日、米国の債務上限を2022年12月まで凍結し、10月1日からの一部政府機関閉鎖を回避する民主党法案の採決を阻止した。債務上限が引き上げられるか、または凍結されない限り、財務省の資金繰りは10月18日までに限界に達する見通しだ。

見通しはどうか?

今回の下落にもかかわらず、我々は、経済と企業収益の強いファンダメンタルズを下支えに、市場センチメントは回復すると予想する。
FRBは、インフレ率上昇は一時的との見方を変えていない。 28日はリスクオフが強まったため、市場ではパウエル議長の証言におけるタカ派的な要素が強く意識されたが、議長は「これらの制約は予想以上に大きく、長引いているが、今後は和らぐだろう。それに伴い、インフレ率は物価目標の2%に近づいていくと予想される」とも指摘した。
金利は一段と上昇する可能性があるが、株価も同じである。 我々は、金利にはさらなる上昇余地があると考え、年末までに米10年国債利回りが1.8%をつけると予想している。先週のFOMC会合でタカ派的な姿勢を強めたFRBと同様、他の複数の中央銀行も引き締めに着手したか、または引き締めを検討している。さらに、財務省一般口座(TGA)の残高圧縮が完了し、長期金利への下押し圧力が弱まった。だが我々は、中央銀行政策の段階的な正常化は、持続的な物価上昇懸念よりも、健全な経済成長を反映したものであると考える。FRBは米国経済の回復に自信を見せており、デルタ株の感染状況もピークを迎えたように思われ、社会経済活動の指標も依然として強い。1997年以降のデータに基づくと、米10年国債利回りが3カ月間で100bp以下の上昇を見せた局面では、株価は良好なパフォーマンスを示している。株式市場が急落したのは、それよりも大幅かつ急激な金利上昇がみられた場合のみだ。過去3カ月の米10年国債利回りの上昇幅は7bpである。
原油価格は一段高の可能性もあるが、持続的な上昇は見込みづらい。 ブレント原油価格は、我々が9月末時点の予想値としていた1バレル当たり80米ドルに達した。石油輸出国機構(OPEC)加盟国と主要産油国で構成するOPECプラスは日量40万バレルの増産(減産の縮小)を予定していたが、8月は前月比日量15万バレルの減産となったことや、米国を襲った大型ハリケーン「アイダ」の影響で直近28日間で3,000万バレル以上の供給が滞ったことが、原油価格の押し上げ要因となった。しかし、9月は供給制約が改善され、OPECの石油輸出は反動増となっており、また今後数カ月間で増産を予定している。天然ガスと石炭は、在庫低下により価格が高止まりする可能性が高いが、来年は価格下落を予想する。ロシア、南アフリカ、中国で生じた供給の混乱が、来年は改善する見通しであるためだ。
米国の債務上限問題は妥協的解決策が出てくると予想する。 米連邦政府の債務上限問題とそれに伴う債務不履行(デフォルト)への懸念が株式市場で高まった。これは、先週、米国とドイツの10年国債金利差が10bpほど開いた一因でもあるとみられる。10月18日に期限が迫る債務上限の対応をめぐって審議が長期化する確率が高まり、これにより、目先、ボラティリティがやや上昇する可能性がある。共和党による上院での反対を回避するため、民主党は10月の財政調整措置に債務上限の引き上げを含めると我々は予想していた。民主党のシューマー上院院内総務の28日のコメントで、民主党が財政調整措置を使って債務上限を引き上げるのかどうか疑問視する声も上がったが、これは交渉上の戦略の可能性がある。これで、審議は一時的に膠着状態に陥る可能性もあるが、10月18日までに交渉により何らかの妥協的解決策に着地し、米国債の債務不履行やそれを受けた格付け引き下げは回避できるものと予想する。一方、政府の資金を手当てする法案の期限も迫っており、成立しなければ一部の政府機関は一時閉鎖に追い込まれる。だが、政府機関の閉鎖はこれまでにも頻発している。1980年以降、米国政府は14回の政府機関閉鎖を経験している。閉鎖期間は平均7日で、過去最長は2018年12月の34日だった。市場への影響は限定的で、閉鎖4週間前から再開後4週間迄で、S&P500種株価指数は平均5%のプラスリターンを出している。閉鎖を回避するために、債務上限の引き上げを法案から切り離す場合は、共和党は今週後半に短期の継続(暫定)予算案を支持するものと我々は予想する。

投資家の取るべき行動

グローバル景気回復の勝者への投資:米国の消費者信頼感が低下しているが、米国経済の回復は順調に進んでいるとみる。新型コロナのワクチン接種が進捗したことで、感染者数の増加に対し重症化率は比較的低く抑えられており、経済の完全再開に向けた動きが今後も継続するとみられる。消費者のバランスシートも健全で、ロックダウン期間中に積み上がった過剰貯蓄や収入の回復により、今後支出が拡大すると予想する。経済及び企業利益見通しも世界的に上向きだ。世界の企業利益については今年が42%増、2022年は9%増を予想している。以上から、我々はグローバル景気回復からの勝ち組銘柄を推奨する。具体的には日本株式、および、エネルギーや金融などの景気敏感セクターが市場をアウトパフォームするとみている。また、米国中型株や経済再開の追い風を受ける企業も堅調を見込む。

ヘルスケアでの機会を探る:ヘルスケア・セクターは、製薬会社などにみられるディフェンシブ性と、メドテックや遺伝子療法などにみられる長期成長性を兼ね備えている。こうした特性は足元の市場環境下においては魅力が高い。ヘルスケア・セクターは製造業景気指数がピークアウトしたのちにアウトパフォームする傾向があり、景気の先行き不透明感に対する耐性があり、また構造的な成長ポテンシャルがあるためだ。

オルタナティブ(代替資産)への分散:今回株式と国債が同時に下落したことからもわかるように、伝統的な分散手法で効果を上げることは難しくなりつつある。しかし、オルタナティブ投資を組み入れることで、リスクとリターンの分散効果を高める方法もある。ヘッジファンドとプライベート市場がその対象となろう。ヘッジファンドは市場のボラティリティ(変動率)や資産間のリターンのばらつきを利用する運用手法であり、足元の市場環境はヘッジファンドの優れたリターンを促す。プライベート市場は、成長やインカム収入、超過リターンの代替的な源泉となりうるため、同じく魅力が高い。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Tech leads stocks lower as yields rise”(2021年9月28日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年9月29日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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